価格競争から脱却したモノたち
なかなか不況が回復しない中、物が売れない→値段を安くする→それでも売れない、というデフレスパイラルによって、企業の体力が落ち、それによって会社に勤める従業員の給料が増えないことにつながっています。一見ものの値段が安くなることはいいことなのではないかと思ってしまいますが、実はこのような社会的な連鎖反応によって結果的に自分たちの生活は苦しくなってしまうのです。
例えば、牛丼やハンバーガーなど外食チェーンでは価格をどんどん押し下げていき、それを武器に客を集めていました。しかし、自分たちは始めこそ驚きと嬉しさでどんどん利用するのですが、しばらく経つとそれが当たり前になってしまい、数多くの選択肢のひとつになってしまいます。
この結果、売上げも一時的には急上昇するのですが徐々にその効果は薄れていってしまうことになり、次々と目玉となる企画を出し、かつ収益をあげていく必要があります。話題性と収益性というふたつの目的を両立し続けるのは困難なことなのです。
そんな世界から脱却し独自の道を歩み、成功した例が最近3つほどあります。それは、マクドナルドのBig America、三洋電機のGOPAN、スーパー・北野エースのレトルトカレーです。
これからに共通するのは、値段以外の価値を提供しているということにあります。1つ1つの商品は同様の商品と比較して決して安いとは言えません。それでもお客様がそれに集中するのは、値段以外に価値を見いだしているからに他なりません。
例えば、テキサスバーガーなどのアメリカバーガーは素材にこだわった高級感と期間限定という希少性が受け大人気となりました。同様のハンバーガーは以前からレストランなどで食べることができたのですが、それが今大人気となったのはマクドナルドの見せ方がうまかったのだと思います。たまにマクドナルドに行くとがっつり食べたい、ビックマック以外の美味しそうなものが食べたいというときにこれを選んだりします。
GOPANは、通常2万円台で買えるパン焼き器が5万円もするのですが予約が殺到しています。ご飯でもっちりとしたパンを作れるという今までにないコンセプトもさることながら、全国に数多くいる小麦粉アレルギーの人に美味しいパンを提供するという思いが、消費者に受けたことも大きな要因といえます。
尼崎市を中心に展開しているスーパーである北野エースでは、レトルトカレーが180種類以上あって、色々選ぶことができます。選べる楽しさはただ買うという行動を特別なものに替えてくれるのです。
日常の出来事がほんの少しだけ非日常になるということ、それこそが人々が見いだす価値であり、その経験をするために人はお金を払うのです。これらの成功例からお金を出す楽しみを得ることができるようなサービスやモノがもっともっと増えてくれれば、景気が上向く日も近づくのではないでしょうか。
「最強のサービス」の教科書 (講談社現代新書) (2010/09/16) 内藤 耕 |
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