坂の上の雲 第7回「子規、逝く」
これまで3人が明治という荒波の時代をどのように生き抜いていくかをテーマとしたドラマの中で、重要な一人である正岡子規が亡くなります。これまで東京・根岸の病床六尺と言われていた子規庵で様々な執筆活動を行ない、いつも人々が集まる場所でした。それによっていつでも暗くならずに済んでいたのかというと、そうでもないようで、やはり苦しいときは死んでしまいたいと思ったといい、見ている方もその苦しみに胸が締め付けられるようでした。
それでも、必死に執筆活動を続けてこれた原動力はどこにあったのでしょうか。秋山真之が訪ねてきたときに、二人はお互いの顔を覆いながら抱き合ってその苦しみを分かち合おうとしていました。いつだって子規にとって苦しみを吐露することができる存在は真之以外にはいなかったのでしょう。律を演じた菅野美穂さんによると、本木雅弘さんと香川照之さんはお互いに同い年で普段から仲がいいそうです。そんな関係が、演技の中でもプラスに働いていることは間違いありません。
正岡子規の最期を近くで看取ることができなかった真之は、そのやるせない気持ちからなのか、子規の葬儀には出席せずに遠くからあいさつをするだけにとどめます。この時、子規に対して真之はどのように思いを伝えたのでしょうか。
考えてみると、坂の上の雲というドラマが展開される明治時代を舞台にしたとき、その多くは戦争や政府などの政治的な側面がどうしても多くなってしまいます。それに対して、坂の上の雲のよさは、正岡子規という文豪を物語の中に交えることによって、全体的に他の類を見ない時代全体を感じることができる内容に仕上がっているのだと思います。そういう意味で、正岡子規という存在がいかに大きかったのか、改めて感じます。
子規の死後、自分の時間を持つことができるようになった律は30を過ぎて学校に通います。これからは自分の時間を持つようにしたいと強く願うその姿は、現代のキャリアウーマンにも通じるものがあるのではないでしょうか。彼女がこの先、どのような人生を歩んでいくのか、これから演出はあまり多くないとは思いますが、楽しみにしたいと思います。
一方、真之は海軍大学校に新たに設けられた戦術講座の初代教官になるなど、海軍人としての地位をどんどん上げていきます。たくさんの本を読みふけったという真之の仕事面はまさに完璧であり、連合艦隊参謀への道をどんどん突き進んでいくのです。
そんな真之の今回の最大のニュースといえば、稲生季子との出会いでしょう。出会った瞬間に一目惚れしたという二人は、見ているこっちが恥ずかしくなるほど誰にでもわかる様子。真之が入院した際にもお見舞いに登場し、やってきた律がこっそりと帰るほど。実は律と真之は結ばれるのではないかと思っていたので、かなり自分の中では意外な展開でした。でも、一目惚れなので、次回は見事結婚となるようです。これで、松たか子さん演じる多美にお小言を言われなくても済むようになりそうです。
その旦那である好古は、清の国で男前な清国駐屯軍司令官となっていました。自らつるはしをもって道の工事をする素敵な面や、訪問した袁世凱と酒を酌み交わし親交を深めるなど、順風満帆の駐屯生活です。まだ彼が思いきり動くのは先のようです。
それにしても、子規を演じる香川さん、本木さん、阿部さんを始めとしたキャストの迫真の演技は見る者を、話の中に吸い込ませてくれます。子規庵での香川さんの苦しみと思い、本木さんの海軍大学校での「無識の指揮官は殺人者なり」と叫ぶシーン、阿部さんの袁世凱との馬での対決とそのあとのシーン、どれも吸い込まれてしまいます。
そしてそれをバックアップする演出の数々。力が入っている番組を見ると、余計なことを一切考えずに物語や主人公の心の動きに集中することができるということを実感できる作品といえるでしょう。次回がどんどん楽しみになります。
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