黄砂は2週間で地球を一周
今年はいつになく黄砂の影響を大きく受けていて、福岡などでは黄砂に関する注意まで喚起されるほどに黄砂は人々の生活を苦しめています。すでに工藤静香さんが歌うような「黄砂に吹かれて」などと悠長なことも言っていられない状況にあるのですが、どのように地球上を流れているのか長らく不明なままでした。
黄砂は主に中国のタクラマカン砂漠などで発生するのですが、それが偏西風に乗って日本上空を通過し太平洋に抜けるところまでは観測されていたのですが、その旅には続きがありアメリカ西海岸に到達後アメリカを横断し、大西洋を越えてヨーロッパへ到達します。さらに大陸を抜けて最後は中国まで戻ってくることを九州大学の鵜野伊津志教授たちが発見しました。
この間の黄砂の旅は約2週間。中国で発生する約80万トンの黄砂のうち、50万トンが高度8000メートル以上にまで上昇してから偏西風に乗って移動していきます。そのうち8万トンが13日間で1周してもなお大気中に留まっているというのです。ということは絶え間なく吹かれる黄砂のなかで、大気中における黄砂の含有量は着実に増えていっているということなのでしょうか。
日本では黄砂の影響というといいイメージがなく、どちらかというと害にしか考えられていない状況にあります。チリによる呼吸器系の障害や、洗濯物などの汚れ、さらに中国で排出される大気汚染物質が黄砂に付着し、それが雨となって日本に降り注ぐことによる汚染など問題も数多く眠っています。
しかし鵜野教授は黄砂の重要な役割を指摘しています。黄砂は大気の高層部で雲を作り、地球の温度を冷やす方向に働いたり、太平洋や大西洋のプランクトンに必要な金属成分を運び、海洋生態系に重要な役割を果たしている可能性があるというのです。遙か昔から吹かれていた黄砂は、地球環境のシステムの中に組み込まれているのです。
問題はその量なのです。少量であるからこそ生態系にいい影響を及ぼすのであって、それが大量に降り注ぐという過去に類を見ない状況になることによって生態系は確実に変わっていきます。それを助長しているのは他ならぬ人間なのです。地球を一周し地球を上空から見てきた黄砂は何を感じるのでしょうか。
【参考】YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090721-OYT1T00200.htm