平清盛 第23回「叔父を斬る」
前回から引き続き、保元の乱の戦後処理についてで、内容的には前回で既に分かっていたとおりになりました。大切なのはその「瞬間」をどのように演出していくのかということに注目していました。
まず始まりは、忠正と為義両方がどのように過ごしていたかですが、どちらも自分が今後どのような沙汰を受けるかが分かっていたようで、まったりとぼーっと過ごしていたように思えます。事実として清盛や義朝に事実を言われたり、言動で示された時にも平然と受け止め、自分がそれぞれの一門を反映させるために、必要な死だと明言しています。ここまで覚悟が座っているようだと、もはや説得するという次元ではないことが分かります。
素晴らしい演出だったのは、忠正と清盛の三男・清三郎のやりとり。忠正はそれまで十分な時間があり、わらじをいじっていたにも関わらず、その前に約束していた竹馬の作成を完全に忘れていたようで、何も知らない清三郎は「約束していた竹馬はどうした?」と催促します。これに対して忠正は戻ってきたときに作ってあげると新たな約束をするのですが、感動的な場面であると同時に、これが本当であれば清三郎は後々ものすごく引きずることになりそうです。この後何らかの心の傷が清盛自体に向かないことを祈るばかり。
そしてとうとう斬首をする刻限。この辺りは、完全に予想通りのやりとりだったのですが、予想外だったのが清盛は忠正を切ることができたのに対して、義朝は為義を切ることができずにただただ泣くばかり。この状況をつぶさに見ていた鬼武者は、父を助けようと元服することを進言し、頼朝が誕生します。
もう一つ意外だったのが、それぞれの処刑場に、西行と鬼若が隠れて見ていたこと。この二つのシーンを完全にシンクロさせようとしたい制作者側の意図がまったくわかりません。台詞や登場人物に類似を求めることによって、何を伝えたかったのでしょうか。誰か偉い人に教えてほしいです。
全てが終わった後に、信西は藤原師光を通じて今回の本当の思いを自分たちに伝えてくれています。本当は自分も斬首をするというところまではいきたくなかったのだけど、藤原摂関家の力を弱めるためには、その部下であった為義を処刑する必要があり、そこに意味を持たせるためには、平氏や源氏といった境界をわけることなく、両方に沙汰を下す必要があったということ。信西は何も言わずにただ涙を流します。
この思いを、後に清盛に語っていて、新しい世の中を作ろうと話をします。この「新しい世の中」という言葉は、様々な場所で登場するし、後白河天皇も話をしていますが、具体的にどのような世の中が新しく、今の世の中の何が悪いのかよく分かっていないので、イメージがわかないんですよね。まるで現代の政治の世界に通じているところもあります。そのあたりの背景は自分で勉強しておいてください、という宿題を自分たちに課しているのかもしれません。
最後は、清盛が平氏は一蓮托生であることを声高に一門に伝えるのですが、このシーンもどこかで見たことがあるような気がします。おじさんを斬首するというものすごくインパクトの大きいことをしたのですから、その後のメッセージはもっと感動的にしてほしかったなというのが、ドラマ視聴者としての思いでした。
次回は、信西がどんどん自分が目指す政治を実行していきます。その中で武士がどのように活躍していくのか、その片鱗が見えたらいいなと思います。
◆清盛紀行◆
京都府京都市
- 左女牛井之跡
- 船岡山
- 源義朝の供養塔
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