タクシー冬の時代をどう乗り越えるか
数年前、深夜までの残業が重なり、毎晩のようにタクシーを利用することがありました。その頃はタクシーの運転手も忙しいとにこやかに話してくれ、このあたりに止まってしばらくすると客がつかまるというポイントをいくつも教えてもらったものです。
最近では、そのようにタクシーを利用することも少なくなり、逆に歩いて帰る道すがら多くの客待ちのタクシーを見かけることが多くなったような気がしていました。それを裏付ける統計が発表されました。
関東運輸局によると、2009年5月の1台1日あたりの平均売上額が3万8243円と第2次石油危機以来27年ぶりに4万円を切ったそうです。95年の5万7963円をピークに減少が続いた結果なのですが、仮に法人タクシーのドライバーの取り分が6割だとすると1年間平日すべて働いたとすると550万円となります。そこから税金等を控除されると400万円を切ってしまうのではないでしょうか。
タクシー運転手という過酷な労働にも関わらず、それに見合った収入とは言えないですよね。これにはタクシーの供給過剰が背景にあるといいます。第2次石油危機を先ほどかねあいに出しましたが、その頃から6割もタクシーの台数は増えているそうで、走行距離のうち実際に客を乗せて走った割合が5月で37%しかなかったのです。半分以上の時間を空車で客を探し求めて走っていたことになります。
不景気や節約志向の浸透など、これからタクシー人気が戻ってくるという要素は今のところ見受けられません。個人タクシーの場合には、車のメンテナンス費用もバカにならないといいます。快適に乗ってもらうために維持費を掛けたり新しい車を導入することによって負担は増すばかりです。このままでいくと労働環境は益々過酷なものになっていくでしょう。そのためにタクシー業界全体として、できることはないでしょうか。厳しい規制に縛られる面もあると思いますが、何か積極的な施策を展開しない限り事態は打開しません。
タクシーの便利さは誰もが認めるところ。最大のネックはその金額です。近年都市部で車の保有率が減少している状況はタクシー業界にとっては好都合でしょう。ほんの少し隣町のスーパーへ買物、ショッピングを楽しみたい、子供を病院に連れて行きたい、等ちょっとした街乗りの手段としてタクシーを利用したいと思う人は多いのです。そのような人に対して、初乗りを200円にするとか、ある場所までは一律料金にするなどの施策を取り入れることによって、どんどん利用する人が増えるのではないでしょうか。
だまって何もせずに、不況のせいにして苦しむよりも何かできることをやってみる姿勢が今タクシー業界には求められているのかもしれません。
【参考】日本経済新聞 2009年7月2日
MKタクシーから学ぶお客様の心を動かすサーヒ゛スの裏側 (2007/03/08) 青木信明 |
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