上手に伝える方法
自分は一人では生きていくことができません。仕事だけでなく、普段の生活でも自分の力だけでなく、多くの人を助けそして助けられることによって今の自分があるのです。つまり人は、常に人とのつながりの中で生きていて、相手に何かを伝えることはすごく大切なスキルであることがわかると思います。
ところが、人に自分が思っていることを適切に伝えることは難しいものです。相手に嫌な気持ちをさせずに、いかにお願いをするか、簡単なようでなかなかうまくできなかったりして相手に嫌な思いをさせてしまうこともあります。
例えば、自分が会社の後輩にある仕事をお願いしたいとき、「○○くん、この資料を今日中に作っておいて」ということを言ったとします。後輩は先輩からのお願いであること、自分がうまく断れない性格上、自分が取り急ぎやらなければならない他の資料作成があるにも関わらず受けてしまい、結果として期限までにできずに先輩から怒られるというケースがあります。
このケースに代表されるように、自分と他者との関係は「OK牧場」という言葉で表現することができます。(決して元ボクサーの言葉ではありません)これは、
・自分がOKで他者もOK
お互いに合意した素晴らしい状態
・自分がOKで他者がNG
自分が相手に強制的に依頼すること、押しつけた状態
・自分がNGで他者がOK
自分がうまく断れずに、相手を受けて入れしまった状態
・自分がNGで他者もNG
お互いにうまくかみ合わない状態
という4パターンに分類することができる心理学用語だそうです。最後のパターンは論外としても、理想は合意が獲れている自分OK、相手もOKの状態です。こうなるためには、自分が相手のことを思いやり、認め、気遣う気持ちが大切です。
先のケースでは、先輩が「自分OK、相手NG」、後輩が「自分NG、相手OK」の状態になってしまっている状態です。これは双方にとって居着かすとレスになって蓄積していくことになります。そこで、先のケースでの理想系を以下に示します。
先輩:「今話せる時間はある?実は急にこの資料を部長に提示しないと行けなくなったんだ。この仕事は元々あなたが得意なものだよね。だからあなたがやるのが一番効率よくできると思うんだ。申し訳ないけど、協力してもらえないかな?」
先輩は、相手のことを気遣い後輩じゃないとできない作業であること、なぜお願いしているのかを明確化し、あくまでお願いベースで聞いています。
それに対して手が一杯である後輩の理想型は以下の通り。
後輩:「申し訳ありません。今緊急で他の資料を今日中に行う必要があるので、この資料まで手が回らない状態です。そこで提案なんですが、他のCさんにこの資料作成をお願いして、自分が最終チェックをするというのはいかがでしょうか。もちろん自分も今の作業が終わり次第、交代します」
後輩は、今は困難でもそれをそのまま伝えるのではなく、代替案を提示して先輩のお願いに誠意を見せようとしています。先輩が困っている状況をうまく他の提案で実現しようとする姿勢によって、先輩からの印象もよく自分の思いをうまく伝えることができるでしょう。
一方的に相手にお願いするのではなく、自分もできる限りの努力をすること、そして協力して成し遂げようとする誠意を見せることによって相手も受け入れやすくなるんですよね。相手が困っている状況を先手を打って助けてあげたりして、見えない借りをお互いが共有していくことで真のチームワーク、円滑な人間関係を築くことができるのではないでしょうか。
TAを楽しむ本 心のおしゃれ〈5〉心の中にOK牧場 (2000/09) 加藤 浩一 |
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