北島康介に学ぶ勝負脳
北京オリンピックでは、日本競泳陣の活躍は記憶に新しいところです。もちろん彼らの実力が高かったこともあるのですが、技と共にその心を支えた人として一躍有名になったのが「勝負脳」という言葉です。
この勝負脳の提唱者である脳科学者・林成之さんによると”勝つための脳”はビジネスの世界や普段の生活の中でも応用することができるといいます。今回はこの勝負脳を実生活にいかに応用するのかを林先生の言葉を引用しながら紹介したいと思います。
■失速しない脳
よくゴール目前に選手が失速してしまうことがあると思いますが、実は脳の仕組みに関係しているそうです。脳には2つの意識があります。
・外意識:脳には外からの刺激に反応する意識
・内意識:外の刺激を受け止めて脳内で情報処理をする意識
このうち、勝負脳に関係するのは内意識といわれていて、心や感情と強い関連性があり
良い脳と良くない脳の違いを生み出す元になっています。つまり、心や感情が情報処理に大きな影響を及ぼします。林先生は、このことをうまく利用しアドバイザーとして北島選手をはじめ日本のトップアスリートに限界以上の力を引き出す方法を伝授しているのです。
■負けない脳
私たちは、常日頃から一次的な記憶そのものではなく、脳内で再構成されたイメージ記憶で、ものを考えたり運動したりしています。その仕組みを上手く生かすことが、スポーツだけでなく、ビジネスで成功することにもつながるのです。
例えばゴールが近いと視覚で情報を得ると、イメージ記憶の再構成で「ゴールになった」と認識し、自然に身体はパフォーマンスが落ちてしまいます。本人の意識とは関係なく、脳が認識してしまうのです。このように考えてしまうのは、脳の中で感情をつかさどるドーパミンA10神経群を中心に、記憶をつかさどる海馬、情緒を司る扁桃核がポイントとなっていて、林教授はこれを「モジュレータ神経群」と呼びます。
このモジュレータ神経群をうまく制御し、意識して鍛えることによって、実生活でも正しい判断や決断ができるようになるのです。
このように脳内での動きに対して自分たちが考え方を鍛えていくことによって、勝負脳が作られていくことが分かります。そこで、以下に勝負脳を作るための脳の鍛え方を紹介します。
<脳の鍛え方>
■情報はいつも複数以上重ねて理解することを習慣化する
初対面の人は、ぱっと見た印象だけでなく、その時の話の内容や会った場所、着ていた洋服などの情報も重ねて覚えておくと、深く相手を脳に印象づけられる。
■理解した内容を4日後に再確認する
脳はあまり必要でない記憶は、前頭前野に到達後3?4日で消えてしまう。人と意見が異なったり、迷ったときには、結論を先延ばしし、再度検討すると良い結果を導き出せる。
■明るい性格を鍛え、ネガティブなことはいわない
明るい性格を鍛えるとドーパミンA10神経群も鍛えられ、才能を伸ばすことにつながる。
■嫌いな相手を好きになる
さらに踏み込んで相手と自分を一体化する。これは競泳日本代表チームも活用した考えで、自身が水と一体化することで脳が水を「抵抗」とみなさなくなり、それが運動神経に伝わり、より速く泳げるようになるといいます。
■4拍子半のリズム
通常人間は歩いたり、走ったりする時、3拍子か4拍子のリズムをとる。だが脳のパフォーマンスをぐいぐいあげるリズムは4拍子半。作業能率を上げたかったら「イチ、ニ、サン、シ・ィー」と唱えてみる。
勝負の世界でも普段の生活でも、明るくポジティブに物事を考え、相手のことを嫌いになるのではなく相手のせいにしないという基本的な考え方は、ある意味人として当たり前のことだと思います。改めてそのことを学ぶことができるいい機会になりました。
【参考】Business Media 誠
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0902/18/news005.html
ビジネス< 勝負脳> (ベスト新書) (2009/01/31) 林 成之 |
望みをかなえる脳 (2009/01/14) 林 成之 |
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