桜吹雪の吉野山
日本人の心の花といえば、なんといっても桜でしょう。日本には200種類以上の桜があり、季節の半分は日本のどこかで桜の花が咲いています。
その中で日本一といわれる桜の名所として有名なのが世界遺産である吉野山です。この地には1300年もの長い間、日本古来のヤマザクラが御神木として植えられ続けてきました。吉野山には今3万本もの桜の木があり、それらは全て人の手によって植えられたものなのです。
古来より桜は悪行を寄せ付けない神木として崇拝され、人々は次々に桜の木を寄進した結果、吉野の山は桜の山になったといわれています。時代ごとに数々の困難はあったのですが、そんななかでも桜が守られてきたのは心に染みついた桜への愛情だったのです。
今でもその心を受け継ぎ桜を守っている人たちがいます。それが桜守です。彼らの以下のような仕事を日々行うことによって桜を守っているのです。
・桜の木の植樹作業
・桜の苗木作り
高さ15メートルの母樹といわれる桜の実を採るための木から、実を取り出してそれを最低5年かけて苗木を育てます。
・ウメノキゴケを除去する作業
・ヤドリギの除去
そんな吉野の山に今、異変が生じています。桜の木の立ち枯れが近年多く発生しているのです。早速、京都大学の研究者も調査に入って必死の調査が行われています。枯れてしまった桜の木には、ナラタケ類の菌糸がびっしりついていました。ナラタケ類の菌糸は日本中どこでも見ることができるものですが、桜につくと恐ろしいことになってしまいます。
ナラタケ類の菌糸が、木の根にある傷口から侵入し、徐々に広がっていって最終的には桜の木が水分や養分を吸収することができずに、やがて枯れていくのです。気象状況の変化やドジョウ変化、日照の変化など様々な要因が指摘されていますが、根本的な原因である傷口ができる理由はまだ明らかになっていません。
吉野の山ではいつものように、お礼肥えが行われています。これは、若い桜に灰をまいて養分とする行事であり、まさに花咲じいさんの世界を彷彿とさせます。そんな吉野の山には今年も30万人の人が吉野の桜を見るためにやってきました。「日本に生れて世界に一つ」と言う桜守の人の顔も誇らしげに映ります。
散る桜は命がきらめきながら舞う姿だといいます。だから散る桜は美しく人々を魅了し続けるのです。この姿こそが、山を愛し、桜を守る人への最高のご褒美といえるでしょう。この姿を後世の人まで継いでいくことは、日本人でよかったと思える大切な命の継承なのかもしれませんね。
【参考】素敵な宇宙船地球号 2009年4月26日