購入の向こう側にあるものを伝える
深夜にテレビをつけてみると、ほとんどの番組がテレビショッピングになっています。番組製作費用を安く抑えられ、かつ収益をもたらすショッピング番組はテレビ局にとってもメリットが高く、視聴者もほしい商品に出会えたりするので、双方にいい面が現れています。
そんなテレビショッピングの中でも、抜群の知名度を誇るのが「ジャパネットたかた」でしょう。社長の高田明さんの軽快なトークは、見る側に楽しさと面白さをもたらしてくれています。この人のエッセイでおもしろいことが書いてあったので紹介したいと思います。
◆ 向こう側にあるもの
高田さんは、工学部出身のばりばり理系人間。自分を含めて理系人間というものは、誰かに何かを紹介するときに必ず、性能的にいかに優れているか、機能が盛り込まれているか、業界の中でナンバーワンであること等を説明しがちになります。かつて高田さんが洗濯乾燥機をテレビショッピングで紹介した際に、洗浄能力が高いことを様々な実験を通して説明したそうなのですが、視聴者からの反応はさっぱりだったといいます。
このことがきっかけで、高田さんは視聴者が求めているものを見つけたそうです。それは「それを買った人がどのように使えば楽しい生活が待っているか」を伝えてあげる事だといいます。先の洗濯乾燥機では、洗濯と乾燥を機械に任せることによって得られるもの、それは自由な時間です。この自由な時間を使って、自分が好きなことを楽しむための時間のゆとりが広がっています。これを視聴者に伝えてあげるのです。
ビデオカメラであれば、買ったらお父さんやお母さんをとってあげてほしいと高田さんは言います。子供は成長してから自分の昔の映像などあまり見ることはないが、自分の両親が若い頃の映像は、かけがえのない両親への贈り物になり、自分の思い出にもなるのだそうです。
◆ Simple is Best
ある日、ジャパネットたかたの販売員の方が100冊以上の紙の辞書分の情報が入っている電子辞書をどのように訴求しようか悩んでいたそうです。結局本棚に並べたのですが、高田さんはこれではたくさん入っていることを伝えられないと考え、本棚から辞書を取り出して平積みにしていったといいます。背の高さを超えたあたりで崩れ落ち、その後ににこっと笑って「ほら、こんなにたくさんはいってる」と言ったところ、その直後から注文が波のように押し寄せてきたといいます。
また、とある電子機器を紹介するさいには、本番中に商品をアシスタントから受け取る際に、わざと床に落としたそうです。周囲のスタッフは青ざめてしまいますが、カメラマンはこのアドリブを知って知らずか、高田さんの顔をアップに。すると、高田さんは「こんな風に落としても壊れないんですよ」と説明したそうです。
このように、商品の魅力をシンプルに伝えてあげること、細かい説明も必要なんですが訴求力が最もあるやり方だと思います。
シンプルに、かつ使ったときの喜びを具体的に伝える。それこそが、ジャパネットたかたが他のテレビショッピング番組よりも人気を得ている大きな要因なのです。誰かになにかを使える場面は、自分たちの日常生活の中にも必ずあります。そのときには、自分が提供した情報やものを相手がどのように使ってほしいか、どんなメリットがあるのか、それをシンプルに伝えてあげることが大切なのです。
【参考】be on Saturday 2011/8/6
ジャパネットからなぜ買いたくなるのか? 一番売れた生放送の秘密 (2010/10/21) 荻島央江 |