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星の砂が浸食される島を救う

2009/10/20 Category: 環境問題

沖ノ鳥島

東京から約1700キロメートル離れたところに日本最南端の島である沖ノ鳥島があります。誰も住んでいないこの島にも東京都小笠原村という地名が存在していますが、満潮時にも海面よりも上にあるのは東小島と北小島という小さな2つの島だけです。国連が定める海洋法条約での島の定義は「自然に形成された陸地で、水に囲まれ高潮時でも水面上にある」ことが示されていて、沖ノ鳥島はギリギリの条件を満たした島といえます。

この島の果たす役割は大きく周囲40万平方キロメートルという広大な排他的経済水域が広がっていて、海中の水産資源や海底の天然資源は日本のものになるので、この島を守ることは日本の利益を守るという観点からも非常に重要な課題といえます。しかし、この島は浸食が進んでいることから国は護岸工事を行い、小さな島を大きなコンクリートの岸壁でほぼ囲うことによって救ってきました。当面これで問題なさそうに見えたのですが、近年地球温暖化による海面上昇が各地で問題となっており、この沖ノ鳥島も例外ではなくなってきたのです。

この危機を救うために脚光を浴びているのが星の砂として知られる有孔虫の一種であるホシヅナと呼ばれる生物です。ホシヅナはアメーバに似た大きさが2ミリ程度の原生動物で突起つきの殻をもっています。石灰質の殻は死ぬと海岸に堆積して星砂の浜になります。これで有名なのが沖縄県の竹富島だと思います。沖ノ鳥島にいないこのホシヅナを他から移植することによって、星砂を大量に堆積させて自然の島を作る計画が進んでいます。東京大学の茅根創教授によると、数年から10年くらいでサンゴや砂を集めて島状にすることができるとのこと。生物による島の再生は今まさに始まったばかりです。

しかしそうも簡単にはいかない問題も抱えています。沖ノ鳥島は、地形上台風などが多く通る場所で、せっかく作られた砂やサンゴによる陸地も流されている危険性もあります。また、世界中の衛星からこの島の状況は監視されており、日本の動きを逐一目を光らせている現状もあるといいます。このような課題や状況を乗り越えて、自然に島を短期間で再生することができれば、ツバルのように世界中で海面上昇によって国土の存続に脅かされている国々はどんなに励まされることでしょう。星砂やサンゴによる島づくりは、日本だけの利益ではなく世界中の国を救う事業でもあるのです。

【参考】日本経済新聞 2009/08/23

日本人が行けない「日本領土」 北方領土・竹島・尖閣諸島・南鳥島・沖ノ鳥島上陸記 日本人が行けない「日本領土」 北方領土・竹島・尖閣諸島・南鳥島・沖ノ鳥島上陸記
(2007/05/31)
山本 皓一

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