赤ちゃんの驚くべき能力
産まれたばかりの赤ちゃんには、驚くほどすごい能力がたくさんあります。
例えば・・・・
・産まれたばかりの赤ちゃんでも立たせると歩こうとする
・猿のような動物の顔を大人は識別できませんが、赤ちゃんは瞬時にそれらを識別できる
・世界のどんな言語でも聞き分けられる
しかし、産まれてまもなくするとこの能力はなくなってしまいます。
この秘密について、シカゴ大学 ピーター・ハッテンロッカー教授を中心とするグループが研究を続けています。それによると、脳の働きが大きな役割を果たしているというのです。
シナプス(神経細胞間のつなぎ目)は、1歳までで成人の1.5倍という人生最大の数になり、神経細胞が最も結びついて脳の機能が最も活性化する時期を迎えるのです。その後は徐々に少なくなっていきます。
このことを実際に赤ちゃんを観察することで研究しているのが東京大学の河西教授。
生後14日よりも生後2ヶ月のほうが手足の動かし方が少なくなっています。2ヶ月から言葉を聞き分ける能力や、見分ける能力も失われていっているのです。これらはもともとあった能力が失われていっている証拠といえるでしょう。
しかし、生後半年になると手足が動く範囲が再び広がっていて、生後14日よりも多く広がっていて、左右のバランスをとりながら対称の動きをすることができるようになります。確実に以前より成長しているのです。
この鍵は、2ヶ月のころいったん動きを整理したことで、高度な動きをすることができるようになったことによります。一見後ろに下がるということは発達の一部で、複雑な仕組みを発達させる戦略であり必要不可欠なことだったのです。
脳の世界では、役に立たないシナプスは減り発達に役立つシナプスだけが生き残っていくプロセスがあります。シナプスは密に形成されているので不要なものを壊し、新しい可能性を生成することで、よりよい脳のネットワークを作ることができるのです。
赤ちゃんの能力は、どんな環境にも適合できるように作られていて、それが一度自分の環境に適合すると、不必要なものは消えていき、新たに必要な能力を作り出していくのです。
では、この時期によりよい環境を作るためには何が必要なのでしょうか。
ワシントン大学教授パトリシア・クール教授は、外国語を効果的に学ばせる方法を研究しています。
その結果、ビデオで学習しても赤ちゃんに効果はないことがわかってきました。それが直接対面して学習すると飛躍的に効果が高くなったのです。
このように、人との関わりの中で学習することが人を育てるということがわかったのです。
ハイハイやお座り、寝返りも、周りの友達と遊ぶことによって、できるようになることが知られています。今までできなかった赤ちゃんが、周りの生まれた時期が同じで成長が早い赤ちゃんに接することで、いい意味で影響を受け、できるようになったりするのです。
赤ちゃんはありとあやゆる環境に備えた能力を持って生まれてきます。その能力を成長の過程で取捨選択し、必要な能力を伸ばして、未来を形作っているのです。
赤ちゃん一人ひとりが、自分だけの環境の中で自分だけの成長の記録を作っていくのです。それが素敵な個性となってその赤ちゃんを魅力的な人間へと導いていくんですね。
NHKスペシャル 赤ちゃん 成長の不思議な道のり (2007/02/23) 教育 |
◆関連する記事◆