「松井秀喜」の先に見えるもの
2012年シーズンは、松井秀喜にとって凄く厳しい始まりとなりました。開幕当初は所属チームすら決まらなく、日本に戻るのではという噂がスポーツ紙をにぎわいはじめるようになります。しかし、5月現在彼は、レイズの先発メンバーとして数々の困難を乗り越えて、表舞台に立って活躍しています。
松井秀喜という選手は、そこまで大記録を打ち立てている訳ではないのですが、ヤンキースのジーター選手など多くの選手や監督から慕われています。それは一途にチームのために戦う真摯な姿と、絶対にめげない不屈の精神に魅力を感じているからに他なりません。この思いを胸に先の見えない戦いでもチャレンジしてこれたのでしょう。
毎日新聞に、作家である伊集院静さんが今書いている原稿<私たちはなぜ松井秀喜が好きなんだろう>について紹介されていました。そこで伊集院さんは次のように語っています。
「一番苦しく見える時が、実は人間の幸せなのかもしれません。仕事を続けられること、職場があることは、人間にとって何と大事なことか。報酬の多寡など関係ない。仕事や職場があることにこそ無償の価値があると、彼は教えてくれる。命をかけて闘う彼の姿から、日本人は多くのものを得ているのでしょう」
伊集院さんは1月、松井選手に会った時、こんな話をしたという。「もしも君が米国で最後までプレーを続けるならば、米国人すら知らない小さな街のチームで選手人生を終え、街を去る日に見送りに来てくれた老人や孫たちと交わす最後の言葉の中に、野球の神髄を見いだすのかもしれないね。そんな風景を私は想像してしまうんだ」
この時、松井選手は一かけらの迷いもなく答えたそうだ。
「たとえそうなっても、どんなに小さなチームでも、僕はベストを尽くします」
いかがでしょうか。今自分が所属している居場所があるということは、ものすごく幸せなことであり、それだけで感謝すべきことなのです。自分は昔遠くに一人で旅行に行った際に、友達と楽しそうに話をしている学生や、子供達をみて、自分も家に帰れば同じような友達や家族がいるのだと改めて感じるとともに、今この場所ではひとりぼっちであることが少し寂しくも感じた経験があります。
人は、当たり前のことにはなかなか気がつきません。そこから遠く離れたとき、自分にとって何が大切なのものなのかわかるのだと思います。
今回、松井秀喜は改めて自分にとって「大切なもの」を改めて感じ、その思いを胸にチームのために全力でプレーしてくれると信じています。その姿が、日本人だけでなくアメリカ人や世界中の人々にいい影響を与えてくれるのでしょう。彼の魅力は、数字に出ない人としての大切なものを教えてくれることにあるのではないでしょうか。
【参考】毎日jp http://mainichi.jp/feature/news/20120531dde012040079000c5.html
信念を貫く (新潮新書) (2010/03) 松井 秀喜 |
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