クーポンは究極のカスタマイズの世界へ
少しでも安くものを買いたいと思う気持ちは誰もが同じこと。それを助けてくれるのがクーポン券でしょう。様々なところでクーポン券があり、いざ使うときのためにため込んでいるという人も多いのではないでしょうか、自分もおサイフケータイにて、マクドナルドのクーポンを利用していて食べるものはまずクーポンで安くなっているもの選んで買っています。結果的にはクーポンで安くなる商品以外も購入してしまうのですが、なんとなく安く買えたことに満足することができます。
お店側はクーポン券を広く利用者に提供しその中で利用してくれる人を待つというのが一般的な使われ方だったのですが、マクドナルドはそんなクーポン券を新しい方法で配布し始めました。それは、一人一人の購買特徴にあわせた、個人レベルの電子クーポンを配信するというもの。利用者ごとに配信されるクーポン券が変わるというのです。
これまで、こういったマーケティング手法は一般的ではありましたが、個人に配信するメールやクーポン券というレベルにおいては、顧客層というある程度の塊単位で配信するのが一般的であり、個人レベルまで落とし込んだサービスというものはほとんどありませんでした。
それをマクドナルドは、約1000万人が利用しているおサイフケータイに配信される電子クーポンの利用状況を把握することができる仕組みをすでに持っていることから、さらに踏み込んだ個人にあわせたクーポン券配信を実現させることができたのです。
この仕組みを使うことによってお店側としては、以下のような使い方をすることができます。
・週末の昼食時にコーヒーを購入する頻度が高い人には、土曜の朝にコーヒーの割引クーポンを配信する。
・一定期間来店していない人には、以前よく利用していたハンバーガーなどの無料券を配信することで来店を促す。
・販売中の新商品を買っていない人には、半額割引クーポンを配信して試してもらう。
お店としては、まず来店してもらわない限り売り上げを上げることができません。来店してもらった上で、無料クーポンを配信したとしてもサイドメニューをあわせて購入することを期待し、売り上げを伸ばしていきます。そうした動線に利用者を誘導するために、クーポン券は絶大なる効果をもたらしているのです。マクドナルドはこれまで顧客情報分析に300億円を投じて購買パターンを分析してきたといい、それが個人単位でクーポンを出し分けることができるレベルに達したとの判断から、サービス開始に踏み切ったものとみられます。
一様な値下げ戦争を行うのではなく、よく利用してくれる人にきめ細かなサービスを個人単位で提供することによって、全体の売り上げが上がると期待されていますが、この方法が正しいのかマクドナルドの今後の業績が指し示してくれることでしょう。ただ、数ある外食屋さんのなかで自分の好みのクーポンがあるお店を優先的に選ぶのは、自然な流れでしょう。
そう考えると、いち早くおサイフケータイを使って購買パターンを蓄積してきたマクドナルドは先見の明があるといえ、今後は他のお店も同様のサービスを展開していくのではないでしょうか。それは、利用者の側から見ても大歓迎の戦いであり、お得なものを選べるようになっていくようになればいいと思います。
【参考】日本経済新聞 2011年7月14日
マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか? クーポン・オマケ・ゲームのビジネス戦略 (講談社BIZ) (2010/11/26) 吉本 佳生 |
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