さすると痛みが和らぐ効果がある
昔から、どこか打ってしまったりしたときに母親に「痛いの痛いの、飛んでいけ」といってさすってもらうと不思議と痛みがなくなったという経験は誰でもあると思います。でも、よく考えてみるとこの動作も不思議ですよね。打撲したにも関わらずそれを表面をさするだけで痛みが和らいでしまう理由というものがよく分かりません。
そんな何気ない行動にたいして科学的に研究をされていたのが群馬大大学院の柴崎貢志講師たちの研究グループです。打撲などをしてしまうと神経回路が傷ついてしまいます。これをさすることによって修復することができると彼らはいいます。
人間の神経細胞には細長い突起物があるのですが、これが打撲などキズを負うことによってダメージを受けて萎縮してしまいます。このように傷ついてしまった神経細胞から出る突起物を元の長さに戻してあげる働きをするのが、「TRPV2」というもの。このTRPV2は突起物上に点在しているものなのですが、今まで熱を感じ取るセンサーの役割を持っているとされてきました。今回の研究によって熱を感じ取るだけではなく力を感じ取るセンサーの役割を持っていることがわかったのです。皮膚をさすったり引っ張ったりすることによって、TRPV2が修復してくれるのです。
この他、交通事故などで損傷し断裂した神経もこのセンサーの働きで再生することが分かったということで、その他の損傷にも今後効果を確認できると期待されています。自分も大好きなジャイアンツが試合に負けたときなど心が痛んだりした場合にも、とりあえず胸をさすって効果を確認してみたいと思います。。
これによって、さするという今まで生活の知恵として当たり前のように行なっていたものが、きちんと意味のある有効な方法の1つであることが科学的に示されたことになります。長く常識として親から子供へ受け継がれてきた知恵のほとんどには、きちんと理由があるのだと思います。まだまだ同じような「当たり前」が科学的に証明されていないことは数多く眠っているに違いありません。こうした「なぜ?」の正しさを教えてくれるのが科学のすばらしい魅力なのです。
【参考】日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=247903&lindID=4
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