マス向けサービスから「あなただけの」サービスへ
かつてテレビCMを1本流したり、大規模な新聞や雑誌に広告を載せれば誰もがその玲飛びつく時代がありました。しかし、インターネット広告の登場や価値観が多様化し、みんなが同じ方向を向くとは限らない状況が広がっています。となりの人と趣味も志向も違うので、「自分は自分」と考えるようになりつつあります。
そんな時代において、台頭してきたのが「one to oneマーケティング」などの特定の個人に向けたアプローチの手法です。自分のために色々と考えてくれる企業や商品に人は確実に魅力を感じるようになっているのです。例えばGoogleの広告は完全に検索するキーワードにあわせて見せてあげることで、利用者の利便性を高めつつ、商品である広告枠の付加価値も高めています。
この例から見ても分かるように、「あなただけのため」のサービスはそれだけで既存のサービスに大きな付加価値をもたらすことができるのです。日常的なサービスもカスタマイズされることによって付加価値が付き、高い値段で勝負することができるようになります。このことは、多くのビジネスチャンスがあると考えることができるのではないでしょうか。
今回は、「自分専用」でこれから成長が見込めそうなサービスを考えてみたいと思います。もしかしたら数年後この中から本当にサービスを提供するものが現れるかもしれません。
1. あなただけのスタイリスト
自分がすでに行きつけのお店で洋服を購入しているという人は問題ないと思いますが、そういう人は圧倒的に少ないのが現状だと思います。多くの人は、様々なところで着る目的を考えながら購入するのではないでしょうか。しかし購入先がバラバラなのでトータルバランスとしてどうなのか分からないということもあるでしょう。そこで登場するのが自分だけのスタイリストサービスです。
Webサイト上で予め自分の好みを選んでおきます。具体的にこれと書けないと思うので出てきた商品に対して自分が好きか嫌いかをチェックし、「1000円未満」「赤系のパンツ」といった志向を登録し、それをサイトが学習します。その上で、用途別にスタイリストがチョイスして提案するのです。気に入ればそれをまとめて購入するだけという手軽さ。ダメな場合には、その理由を書けばスタイリストがさらなる提案をします。サイト上なので自分が好きなときに買い物ができるのがいいところでしょう。買わないといけないということもないので精神的にも楽です。
2. あなただけのトレーナー
今は空前のマラソンブーム。至る所でランニングする人が出てきています。しかしランニングだけでいいでしょうか。総合的なバランスを考えながら様々な運動をしたいものです。そこで登場するのが自分専用のトレーナー。
サイト上で、体力測定結果を入力し、自分がどうなりたいのかを登録すると、それにあった運動メニューを専門のトレーナーが提案してくれます。それに従って運動を行ない、結果をサイト上にフィードバックします。そうすることによって、自分専用の運動メニューが作られ、無理なく理想の体力をつけることができるのです。
3. あなただけのフードコーディネーター
食べ物を気にする人が最近多くいます。飲み物も最近では「ゼロ」があふれかえり、カロリーや糖分を気にする人が多いことの現れといえるでしょう。自分も最近食事に気を遣う必要があるのですが、「刺激的なものはなるべく食べないように」と言われただけで、何が具体的に刺激物なのかよく分からないので、安全パイのものだけを食べています。そういった食べ物に関するアドバイスをくれるのが自分専用のフードコーディネーターです。
方法は非常に簡単。自分がどういう体型や食生活をしたいのかを予め登録しておき、あとは食べたものをカメラ付のケータイで写真をとって送るだけ。それを自分専用のフードコーディネーターが具体的に何キロカロリーかを確認し、次にどのようなものを食べたらいいのかをアドバイスします。利用者はそれに従って食べるだけなので気軽です。アドバイス通りでなくても、長い目つきで理想に近づけばいいので、明日から少しずつ戻していけばいいのです。
4. あなただけのファイナンシャルプランナー
お金をどのように効率的に使っていくかは非常に大切な問題です。なかなか周囲に具体的なプランを相談できないところがまた悶々としてしまう理由ではないでしょうか。こういうものについて第三者の専門的な観点がほしいところ。そこで自分専用のファイナンシャルプランナーです。
サイト上から自分が信用できると思ったファイナンシャルプランナーを選択し、自分の金融資産を登録しておきます。あとはその人から定期的にアドバイスをもらい自己判断をしていきます。将来の方向性やつかいみちなどを相談できるのも大きいでしょう。2人ほど登録しておけば違った観点でも見ることができます。ただし、あくまで自己判断ではありますが。
5. あなただけの読書アドバイザー
先日、東京・丸の内にある青山ブックセンターで面白いものを見つけました。それはあるテーマに基づいた本が3冊セットで売られていたのです。その3冊を読めばそのテーマに関する答えを見つけることができるというわけです。すごく面白い売り方だと思いました。読書は基本的に好きなように読めばいいのですが、知識を深めたいもの、感動できるつぼにうまく的を得てくれる本を見つけることが難しいといえるでしょう。そこで、登場するのが自分専用の読書アドバイザー。
自分の趣味や考え方、理解レベルを予め自分専用の読書アドバイザーに伝えておくと、最適な本を選んでくれます。これはサイト上だと難しいので本屋さんに常駐する人を想定しています。この人に「今日はこんなのが欲しいんだけど」というだけで、いくつか本を選んで頂き、その場で購入します。
このように、自分専用のサービスは実際の店舗でも構いませんし、サイト上に展開しても構いません。対面で話ができれば最も効果がある手法といえると思います。自分で選ぶ楽しさを残しつつ、自分のために一生懸命考えてくれる人がいるお店やサービスがあれば、併用したくなるのではないでしょうか。まだまだこういったビジネスはたくさんあって、広がって行くに違いありません。
1万人の顔と名前を覚えたコンシェルジュが教える お客様がまた来たくなる極上のサービス (2007/08/02) 加藤 健二 |
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