坂の上の雲 第4回「日清開戦」
考えてみると、大河ドラマの中で明治維新後を描いたものというのは極端に少ないと感じます。少なくとも自分が関心をもって見るようになってからはないような気がします。今回の「坂の上の雲」は大河ドラマではありませんが、この時間に放送する長期的なドラマとしてほぼ同じ位置づけになるものから、事実上大河ドラマといえるでしょう。前からこの時代の生き様を見てみたいと思っていたので、毎回新しい発見をすることができます。
特にこの明治から昭和初期の時代については、その後の太平洋戦争の影響からか人物像を深く描いた作品は少ないように感じます。渡哲也が演じる東郷は冷静沈着な指揮官として写り、時代劇には向かないけどこのような近代ドラマには渡さんはすごく似合っていると感じます。秋山に多くの水兵が慕ってついてきたように、真之もまた東郷へついていきたくなる要素を多く兼ね備えているといえるでしょう。
今回は全般的に日清戦争についての描写になっています。好古も騎兵第一大隊長として旅順に向かって進軍していますが、生と死はほんの紙一重だということを改めて思い知らされる場面でした。とにかく戦闘シーンにおける兵士の数がすごく多く、清側は軽く数千人はいたのではないでしょうか。その先頭にたって陣頭指揮をとる好古の付近では多くの日本人兵士が命を失っていきます。よく爆弾が爆発する原野を一台の車が疾走し、その左右で爆発するシーンをよく見ますが、まさに今回の好古も同じような感じです。ここで命を失っていてもおかしくなく、歴史上の人物として語られることもなかったでしょう。好古も真之も立場は違うけど、それぞれがリーダーとして活躍している様子は、薄氷の上を歩んでいるかのようにも見えます。
一方、子規は俳句への道を突き進んでいて、情景がみえるような作品を数多く世に送り出していましたが、心のどこかで真之や好古の姿に影響を受けていたのです。自分の病状が良くないにも関わらず、従軍し日清戦争の真の姿を見つめようとします。清では、日本人が来るとただ静かに黙ってにらみつけます。この感情は逆の立場であれば当然の行為だと思うのですが、このいたたまれない状況に対して正しいことを写実的に記事にするようにアドバイスするのが後の森鴎外である森林太郎でした。
戦争という状況の中で、とかく戦争自体が語られそのときに過ごした人々がどのように考えてきたのかが伝わりにくいのがこの時代なのですが、今回この物語を通じて戦争の正否という大きな考え方ではなく、時代を必死に生きた人の気持ちをうまく表現していて全く新しい楽しみ方ができています。次回は戦争からは少し離れて、人間性がどのように高まっていくのか、子規の病状など見たい内容盛りだくさんで、来週を待ちたいと思います。
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※一部、読者の方からのコメントを元に修正させていただきました。ご指摘ありがとうございます。