フロリダ 洞窟ダイバーの挑戦
フロリダ半島は「水の半島」と言われており、クリスタルクリアと呼ばれる綺麗な水が懇々と至るところからわき出しています。その多くが透明度50メートル以上あり、その水の総量は1日300億リットルもあり、これはフロリダの飲用水の90%を賄っているといいます。
フロリダには数千キロと言われる水中洞窟が地下に広がっており、そこを流れる豊かな水が、ジニースプリング、ブルースプリング、レッドスプリングなど大小700以上もの美しい泉となって湧き上がっています。これらの泉は「クリスタル・クリア」と呼ばれるほど水が澄んでいます。
この美しいクリスタル・クリアを探検する地元生まれのウェス・スカイルズさんによると、水量と水圧がフロリダの地下洞窟の特徴で地下洞窟には地下水脈が存在し、ここを通じて水が流れてくるそうです。水を浄化してきれいにする効果があるとされている石灰岩が至る所に広がり、寿命が100年もあるという洞窟ザリガニも悠々と生活をしています。
このような地下世界が生まれた背景は、フロリダの誕生に秘密がありました。2500万年前のフロリダ半島は海の下にあることから、フロリダの陸上のほとんどが石灰岩でできていました。それが長い年月をかけて浸食され、穴ができそこから水が地下へと流れていったことから地下洞窟と水脈が誕生したのです。悠久の時をかけてできあがった世界がここにあります。
しかし、この奇跡の水に最近異変が生じています。それはクリスタル・クリアと呼ばれる泉に藻が大量に発生しているのです。糸状藻類が大繁殖し、固有の動植物がしまったところまであるのです。さらに、遊泳中にアレルギー症状が出てくる人まで現われるほど深刻化してきてしまいます。
水質検査の結果、硝酸塩の濃度が非常に高いことが分かりました。硝酸塩は微量であれば植物の栄養素になるのですが、高濃度になると生態系を破壊してしまうほどの毒物になってしまう危険な物質です。
この汚染物質は地下水脈を通じてやってきていることが分かりましたが、どこが汚染源なの分かっていません。そこで、フロリダ州政府は洞窟ダイバーであるウエスさんたちに水脈の調査を依頼しました。
2008年11月。イチェタックニー州立公園に集まったウェスさんたち9名のダイバーが揃いました。まるで毛細血管のように広がる洞窟の中で水流が激しいところへと向かいます。途中からゴミのような浮遊物が漂っていて、ひどい汚染状態になってしまっています。その原因は思いもよらないところにありました。
原因の場所は、新興都市であるレイク・シティーだったのです。ここは泉から30kmも離れたこの場所は、かつて森だったところに次々と住宅が建ち始めました。下水もないので、地下へ汚染した水が流れ込んでいた結果として、地下水の汚染につながったのでした。さらに、芝生に巻かれる肥料や農業、牧畜業でも硝酸塩を使っていることから、汚染物質が流れ込んだのです。
この事実を受けて、ウェスさんは撮り貯めたクリスタル・クリアの写真を地元の人々へ紹介し、肥料を控えるなど自分たちにできることから始めようと伝え始めました。自分たちの飲み水を自分たちで汚しているという事実を受け入れ、その上で自分たちが何をすべきかについて自分たちで見つけて実行していかなければならないのです。運命は私たちの手の中にあるのですから。
これから、汚染された地下水が元の状況に戻るまで、途方もないほどの時間が必要となることでしょう。自然が澄んだ水を作るのに気が遠くなるような長い年月をかけているのに対して、汚すことは非常に簡単でかつ短時間で行うことができてしまいます。自分たちは自然に生かされているんだということを全ての人が共通認識として感じたいですよね。
【参考】素敵な宇宙船地球号 1月4日
アメリカ合衆国環境保護庁・アメリカ合衆国食品医薬品局認定100%オーガニック材料で作られた安…
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