マチュピチュの悲鳴
南米ペルー・アンデス山脈の断崖にそびえ立つ「空中都市」マチュピチュ遺跡。
1911年にハイラム・ビンガムによって発見された、13世紀から16世紀に栄えたインカ帝国の空中都市で、1983年に世界遺産に登録され、いまでは世界中から年間80万人が訪れる、南米一の観光地となっています。今では年間440億円の観光収入を得ることができるようになっています。
しかし、ここ最近そのマチュピチュが危機に瀕していると言われています。多くの観光客が歩き回ることで、石の土台が磨耗して揺らいできており、さらに、遺跡周辺は多雨地帯に位置するため、雨による地滑りや土石流がたびたび発生しているのです。
最近の世界的な異常気象も、今後の地滑り発生につながる可能性があり、安全対策が大きな課題となってきました。
■危機1
観光客増加によって石畳がぐらついてしまっている
インカ時代の古道はトレッキングコースとして利用され、傷みがはげしくなっています。入場者数の規制などといった対策を始めましたが、後手後手に回ってしまっているのが現状です。
■危機2
地滑りなどの自然災害
山で起きた地滑りが並となって麓の村を襲う事故も起きています。
ところが、驚くべきことにマチュピチュの空中都市では目立った災害は行っていません。
この街は、地盤が固く自然災害を十分考慮して都市を構築していたのです。段々畑などによって排水の仕組みをつくりました。都市の面積の3分の2をしめる段々畑は、こういった地滑りを防止するための仕組みだったのです。インカの人たちは、山の麓には地滑りや豪雨といった災害があることを知っていたといいます。そのことが街を作るときに対策をした理由なのかもしれません。
しかし、科学の発達によって新たな問題が発覚しました。ラウル・カレーニョ博士らの調査によって、遺跡の深いところに地滑りの後が見つかったのです。さらに2000年3月には、京都大学の佐々教授が調査した結果、麓の度重なる地滑りによって、その上に乗っかっているマチュピチュの地盤もずれてきてしまっているのではないかという仮設が浮かび上がりました。
2005年にマチュピチュ地滑りに関して国際学会が開かれ、そこで「今後20年、大きな地滑りの危険はない」という公式見解を発表しました。現在もなお、モニタリングが続いています。
近年では、異常気象も乾期に集中豪雨が最近おおくみられるようになってきています。世界的に起きている異常気象に対抗する手段はマチュピチュの人々にはありません。現在でも水はけをよくしたり、石組みを直したりして、遺跡を守るための地道な作業が進んでいます。
この地球を代表する世界遺産を100年後の子供達にどうやってそのままの姿で見せることができるのか、人間の知恵が試されているのかもしれません。
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