緑色記者 涙の事件簿
中国では、環境問題を扱う環境ジャーナリストのことを「緑色記者」と呼びます。
今回は、その緑色記者を2人紹介しています。
一人目のフウ・エイホウさんは、北京の水問題について警告を発しています。
オリンピックを控えた北京は、今深刻な水不足に直面しています。にもかかわらず、ボート競技場には満々と水があり一見水不足とは無縁のようにみえます。
ただし、市民の間で公園などからの水泥棒が横行するなど、確実に深刻さは増してきているのです。
北京市は、現在遠く離れた山間部から水を引いていますが、フウさんはこれに猛反対しています。
北京市に水を送っている一つ、河北省の雲州ダムの周辺住民は近くに水があるにもかかわらず、その水を使うことを許されていません。その水は北京に送るためのものだからです。なので、井戸水を使って生活、農業を賄わなければならないのです。
稲作はもうできないので、当局は水を多く必要としないトウモロコシへの転作を勧めているという状況です。
これにより、今まで2000?3000元の収入があったものが、トウモロコシ栽培により500?600元まで激減してしまっているのです。
二人目の緑色記者である、リさんは南水北調の問題を警告しています。
南水北調とは、南部の長江など水量が豊富な場所から北部へ年間1兆リットルもの大量の水を送るという壮大な国家プロジェクトです。
ここに、今大きな問題が明らかになってきているのです。
南水北調で取水先になる丹江口ダムへは、汚水が流れ込んでおり、これがそのまま北へ流れてしまうという危機に直面しているのです。
その丹江口ダムへ注ぐ馬家河がある十堰市は、急激に発展してきた重工業都市ですが、ここでは馬家河へ生活排水や工業用水が大量に流れ込み、それがダムへ注いでいるのです。
川には血液製剤等の医療廃棄物もあり、非常に危険な水になってしまっているという現状です。
十堰市は、2002年以降「水汚染防止計画」計画していますが、未だ改善が進んでいません。
さらに馬家河の下流の曽家湾村では、魚が大量死している事件が発生しています。
村の住民は、長年の汚染された水を使用していたため、肝臓病などの重大な疾患を持ってしまいました。
このような問題に対して、生態(エコ)文明を国家レベルで宣言し、環境保護に対して取り組んでいくことを胡錦涛国家主席が発表し、本格的な取り組みが始まりました。
日本もその昔、足尾銅山の問題で田中正造が闘いましたが、同じような犠牲者を二度と出すことのないように、中国の科学力をもって未然に防がなくてはならないのです。
一度汚染してしまった土壌や、水を元に戻すのには、莫大なコストと時間を要します。
捨てるのはすごく簡単なことですが、それが如何にまずいことなのかを、地域住民、企業、行政、国家レベルで啓蒙して行かなければこの問題の真の解決ははかれません。
今がどこまで悪化が進んでしまっているのか、数値として測ることができます。まずは現状を把握することから始める必要があるのではないでしょうか。
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