イベリコ豚の森に迫る危機
この村では、イベリコ豚にドングリ(スペインではベジョータと呼ぶ)を食料として利用しています。このドングリを使った飼育方法をモレタネラといいます。
ドングリが採れる木は樫木ですが、大きくトキワガシとコルクガシの2種類があります。コルクガシとはよく聞くあのコルクのことで、実はドングリですが、木の樹皮をはいで乾かしたものがコルクになります。
スペインはポルトガルについで世界第2位のコルク生産量を誇っています。
このコルクは、1回木からはぐと、9年間ははいではいけません。じっくりと10年の歳月をかけて再生を待つのです。コルクガシは10年経つとそのほとんどが元の姿に戻ることができる、環境への影響を最小限に抑えることができ、人間とコルクの森が共生できるサイクルを形成しているのです。
ところが、最近大きな干ばつがスペイン国内で多発しています。
アントニオ教授によると、スペイン国内の多くの土地で砂漠化が進行しているのです。
主な原因は森林伐採。
近年、コルクの需要が徐々に少なくなり、ワインの栓などはコルクにかわって合成樹脂やガラスといったものが多く使われるようになりました。
その結果、コルクの生産者はコルクよりも、より生産性の高い松の栽培や耕作地に転換する用になってしまい、その結果コルクの森は伐採の危機に瀕しています。
コルクの森を守ろうと立ち上がったのは、スペイン人ではなくドイツ人。森林を買い取って再建への道を模索しています。
春風亭小朝が最後に言っていた言葉が印象的です。
「目が疲れたときに、目に貸しを作ったといいます。人間もいくら自分の土地とはいえ、長い目で見れば地球から借りているのです。そういう意味で地球に貸しを作っているのですから、大切に地球にお返しできる状況にしなければならないのです。
今回特殊なのは、コルクの森を守るためには、コルクを積極的に使うということ。
一様に森を傷つけてはダメというのではなく、森と人間が共生できている状況はそのまま残しつつ、明らかに人間が自然を凌駕する状況を排除するということが大切だと思います。
きっと文明が豊かになる前の時代、人と自然は共生し、先祖の人々はそれを生きる知識として後世に残してきたんですよね。科学やテクノロジーが進んだ今、その頃の知識を現代にマッチする形で復元してあげることが、共生復活へのヒントになるのかもしれません。
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