オリンピック誘致失敗から何を学ぶか
2016年夏のオリンピック開催地としてブラジルのリオデジャネイロに決定しました。候補地の一つであった東京もこれまで積極的なアピールによって一時はIOCからの評価が最も高かった時もありましたが、最後は決選投票までいかずして敗れてしまった結果となりました。これには陣頭指揮を執っていた石原都知事を始め多くの人々が悔しさと悲しさを感じたことと思います。自分も東京でオリンピックが開催されれば、間近で見ることができる初めてのオリンピックということもあり、残念でなりません。
この落選に当たって、様々なメディアでなぜ落選してしまったのかについて検証されていますが概ね以下の2点に集約することができると思います。
1. 市民の盛り上がりに欠けた
2. 最終的なプレゼンテーションでアピールできなかった
まず、一つ目ですが市民の盛り上がりについては、確かに弱かった面があったと思います。他の国の市民がどのように切望していたのかを伝えたのかは分かりませんが、「東京でできるならいいな」という程度の人が多かったのは事実だと思います。これはオリンピックが東京に来ると、どれだけすばらしいのだろうというイメージを共有することができなかったのが原因ではないでしょうか。様々な有名人が積極的にアピールしていましたが、趣味や考え方が多様化している東京の市民に、スポーツの祭典を通しスポーツをすることのすばらしさ、そしてオリンピックによる生活のうるおいを訴求することがもっとできたのではないかと思います。みんなの心が一つになるためには、感動や期待をいかに共有できるかにかかっているのです。
次にプレゼンテーション能力ですが、IOC総会が開かれたデンマークの首都であるコペンハーゲンでは、日本のプレゼンの2倍近くの聴衆をリオデジャネイロが集めたそうです。その背景として日本の良さを積極的にアピールすることができず、開催したいという強い気持ち、熱が他よりも劣っていると判断されたとする考え方です。日本人が欧米の人たちと違った表現スタイルであることはよく言われますが、そうなると今後は全く歯が立たないということになります。学生の頃、国際学会で発表した際に日本人の多くは原稿を読みながら話をする人が多かったのに対して、欧米の人々は全く原稿は見ずに聴衆に話しかけるプレゼンをしていて、驚きを感じたのを覚えています。たったこれだけのことでも人への伝わり方は違うんですよね。言葉の壁もあると思いますが、国際社会での日本人がどのようにアピールするかが重要です。
今回は、東京誘致に当たって築地の市場移転問題も関係していました。今の築地の場所にオリンピック関連施設を建設する予定で、移転先である江東区豊洲地区で基準値を大幅に超える有害物質が見つかった件で、移転反対問題もくすぶっていました。落選によってこの移転問題が今後どのようになっていくのかわかりませんが、少なくとも次回以降はこのような問題を抱えることなく、すべての市民が全力で誘致活動を応援できる条件や環境を整備していくことが必要ではないかと思います。
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