星の写真館で逢えた人
あなたにとって、今一番会いたい人は誰でしょうか。
その人はご健在ですか。それとも亡くなっておられる方でしょうか。
日本テレビで今放送している「宇宙で一番逢いたい人」は、そんな願いを叶えてくれる番組です。
といっても、逢いたい人はご健在の方に限りますが。
人は誰でも会いたい人というのがいるものです。その人は自分にとってかけがえのない人であり、自分という存在を輝くものに変えてくれた人でもあると思います。その人に会えるというこの番組によって、その人をより深く知ることができるすばらしい番組です。
この「宇宙で一番逢いたい人」という番組は、”現在生きている人に会うことができる”というものなのですが、それに対して今回紹介したいのは東京メトロの駅で配布しているフリーペーパー「メトロミニッツ」のなかでコラムを掲載している作家の藤原新也さんによる作品です。一部引用させていただきながら紹介させていただきます。
藤原さんは今年の初夢のなかで不思議な体験をされたそうです。以下その夢の中の話。
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気がつくと登山をしていた藤原さんは、その頂上に「天国写真館」と書かれた洋館を見つけます。不思議に思いながらもドアをノックすると女性が英語で「Come in」と言ったそうです。
中に入った藤原さんは、やがて自分の名前を呼ばれます。
「ミスター・フジワラ」
そこで先ほどの女性はこの写真館を説明し始めるのです。「この写真館はお亡くなりになられた方たちのどなたかをお選びになってご一緒に記念写真を撮ることを斡旋しています。」
女性が壁にあるスイッチを押すと天窓が開き、そこには満天の星空が広がります。
「あのたくさんの”来世星”のひとつひとつで死んだ方たちが暮らしているのです。当写真館では”アインシュタインの扉”というものを用意しており、その時空と次元を超越した扉をくぐると瞬く間にあなたのお望みの星に足を踏み入れることができます」
藤原さんは迷いながらも自分の両親を選択したそうです。すると女性は検索を始め満天の星空の中から藤原さんの両親が暮らす一つの星を見つけ出します。その星にいって写真を撮れるのですが条件がひとつ。それは滞在時間が5分間だけであるということ。それをやぶるとその星の住人となってしまい、帰ってこれなくなってしまうというのです。それを受け入れた藤原さんは両親のもとへの行くことになります。
「おう、シンヤじゃないか!」
「シンヤちゃん、よう来たねぇ!」
両親はにこやかに立っていました。母が涙声で「・・・・・元気にしとんのかね」といいます。藤原さんは2人の肩を抱き、うなずくだけで声にならならなかったそうです。
しかし、ゆっくりはしていられません。老人写真師にせかされながらカメラの前で記念写真をとりフィルムを渡され、帰らなければならないときがやってきます。
「元気で!」
「シンヤも元気でのう!」
「さようなら。さようなら!」
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思わず涙ぐんでしまいました。一生のうち1回しか使えないとしたら誰に会いに行くでしょうか。歳をとるたびに逢いたくなる人は増えていきます。その中には自分にとってかけがえのない人は1人に絞ることができないほどいることでしょう。そう考えると、歳をとることは実はとても素敵なことなんじゃないかと思えてきます。
【参考】メトロミニッツ No.075 藤原新也 「撮りながら話そう」より
メメント・モリ (2008/10) 藤原 新也 |
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