エコラベルの落とし穴
今年の初め、大手製紙会社から次々と古紙再生紙の偽装が次々と明らかになりました。業界では随分前から再生紙の方が値段が高いのは当たり前となっていた問題で、「エコ偽装」という名前まで登場しました。
東京大学名誉教授の安井至は、古紙回収、ゴミ分別など環境対策を積極的に行う人が多くなってきたにも関わらず、それが萎えてしまうという危険性をはらんだ重大な問題だと警告を発します。
では、製紙会社はこのような偽装をしてしまったのでしょうか。もちろん経済活動として原価の安いものを使う必要があったという事もありますが、もっと大きな問題がありました。
作った紙を大量に消費する官公庁や企業では、エコマークでないものは全く売れないのです。このエコマークはエコラベルのひとつで、日本環境協会が発行しています。このようなエコラベルは日本国内に90種類以上存在しています。紙を使う企業にとってエコを意識するのはもはや当たり前の事実となっていることから、製紙会社も環境対策をしている紙を提供せざるを得なかったのです。
このエコマークを発行する日本環境協会も、バンバンエコマークを出していたのでしょうか。境界の人によると、メーカに毎日分析期間があるので、それを信頼してエコマークを出していたとのこと。これでは全く意味を成しているとは言えません。
では、そのような偽装問題を引き起こした日本製紙連合会の会長がなんと言っているかというと、「環境に対して言うと、炭酸ガスの産出量については新規に作った方が断然低い。だから古紙を使わなかったからといって環境に負荷を与えたとは言えない」
すでに当事者意識も全くありません。コストが高いのであればそれを安くしようとすることが企業努力であって、それによってよりよい技術が生み出されていくのではないでしょうか。
環境偽装によって余分に1年間に使用された木材の数は、森林面積は東京ドーム485個分にものぼると言います。これでも環境に負荷を与えたと言えないと言えるのでしょうか。全く謎です。
また、ペットボトルのリサイクルもよく行われていますが、その多くが中国に輸出されます。リサイクル法では日本でリサイクルすることとしていますが、中国ではその輸入したペットボトルをぬいぐるみの中綿として利用しているのです。
そのぬいぐるみの多くはゲームセンターにあるクレーンゲームの商品として利用されています。
民間レベルでは、紙コップを減らしたり、会議で使う資料を電子化したり、ビンのデポジット化を進めたりして有限の紙を大切に使う活動が始まっています。
にもかかわらず、一部の心ない大企業によってエコ活動全般が悪いイメージになったり、効果を水の泡にしている、そんな切ない状況が今なんじゃないでしょうか。一人一人の小さいけど決意に溢れたエコ活動も、簡単に企業によって踏みにじられているのです。
今一度、ライフスタイルを見直すいい機会なのかもしれません。
複雑現象を量る―紙リサイクル社会の調査 (2001/09) 羽生 和紀、岸野 洋久 他 |
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