あしたまにあーな

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ツインカップ

2009年4月 24日 By: rainbow Category: 日記 No Comments →

マイセン

何度か紹介している東京メトロの駅で配布しているフリーペーパー「メトロミニッツ」の中の一コラムである「撮りながら話そう」はいつも読み手の心を揺さぶる物語に溢れています。自分がこのフリーペーパーを読むのが楽しみに20日を待っているのはこの記事があるからこそなのです。

いつかこの記事をまとめて本にしてほしいと思うくらい、その内容の完成度はかなり高いと思います。今日は今月号に掲載された「ツインカップ」を紹介します。

千葉県は房総半島の国道127号から外れたところにぽつんとある喫茶店「カフェ・恵」。

家はバラック建ての粗末な平屋建てで、店内には白いワンピースにアプリコット柄の前掛けを羽織った色白の30代とおぼしき女性と、逆に色黒のがっちりとした精悍な感じの男性がそろって、「いらいっしゃいませ」と人の心に染みいるようなデュエットで迎えてくれます。

カウンターの上のガラスの陳列ケースには2つのコーヒーカップが仲良く並んでいます。そこに書かれていたのは「meg」と「hide」という文字。店の風貌とは異なり、そのカップはマイセンのものでした。

数年後に再度立ち寄った「カフェ・恵」に小さな変化が起こりました。「meg」のカップだけがないのです。しかし2人はいつものようにそこにいたのです。

数ヶ月後に訪れると、「meg」のカップだけでなく「meg」自身もいませんでした。hideに問いかけると「ずっと患っていた乳ガンが3ヶ月ほど前、肺に転移し入院しておりまして・・・・」とのこと。

さらにその半年後、「カフェ・恵」のあった場所はアスファルトの駐車場になっていて、その周りには秋の日差しのもと、たくさんのアメリカ泡立ち草の黄色い花が風に揺れています。

「いらっしゃいませ・・・」

不意に、あのデュエットが聞こえたような気がしました。

本当に短い小説なのですが、この二人はおそらく夫婦だったのでしょう。ずっと二人の夢だった喫茶店を開くことができ、奥さんであるmegも旦那さんであるhideも幸せだったに違いありません。

そんな彼らにも運命は残酷にも降り注ぎます。この後旦那さんはどうしたのかは分かりません。どこかで奥さんの想いをつなぎ続けているのかもしれません。そんなストーリーが次々と頭に浮かんでは消え、なんとなく切なくなってしまうのが、作者である藤原新也さんの作品なのです。

【参考】metro min. No.078


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星の写真館で逢えた人

2009年1月 31日 By: rainbow Category: 日記 No Comments →

満天の星
あなたにとって、今一番会いたい人は誰でしょうか。

その人はご健在ですか。それとも亡くなっておられる方でしょうか。

日本テレビで今放送している「宇宙で一番逢いたい人」は、そんな願いを叶えてくれる番組です。
といっても、逢いたい人はご健在の方に限りますが。

人は誰でも会いたい人というのがいるものです。その人は自分にとってかけがえのない人であり、自分という存在を輝くものに変えてくれた人でもあると思います。その人に会えるというこの番組によって、その人をより深く知ることができるすばらしい番組です。

この「宇宙で一番逢いたい人」という番組は、”現在生きている人に会うことができる”というものなのですが、それに対して今回紹介したいのは東京メトロの駅で配布しているフリーペーパー「メトロミニッツ」のなかでコラムを掲載している作家の藤原新也さんによる作品です。一部引用させていただきながら紹介させていただきます。

藤原さんは今年の初夢のなかで不思議な体験をされたそうです。以下その夢の中の話。

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気がつくと登山をしていた藤原さんは、その頂上に「天国写真館」と書かれた洋館を見つけます。不思議に思いながらもドアをノックすると女性が英語で「Come in」と言ったそうです。

中に入った藤原さんは、やがて自分の名前を呼ばれます。

「ミスター・フジワラ」

そこで先ほどの女性はこの写真館を説明し始めるのです。「この写真館はお亡くなりになられた方たちのどなたかをお選びになってご一緒に記念写真を撮ることを斡旋しています。」

女性が壁にあるスイッチを押すと天窓が開き、そこには満天の星空が広がります。

「あのたくさんの”来世星”のひとつひとつで死んだ方たちが暮らしているのです。当写真館では”アインシュタインの扉”というものを用意しており、その時空と次元を超越した扉をくぐると瞬く間にあなたのお望みの星に足を踏み入れることができます」

藤原さんは迷いながらも自分の両親を選択したそうです。すると女性は検索を始め満天の星空の中から藤原さんの両親が暮らす一つの星を見つけ出します。その星にいって写真を撮れるのですが条件がひとつ。それは滞在時間が5分間だけであるということ。それをやぶるとその星の住人となってしまい、帰ってこれなくなってしまうというのです。それを受け入れた藤原さんは両親のもとへの行くことになります。

「おう、シンヤじゃないか!」
「シンヤちゃん、よう来たねぇ!」

両親はにこやかに立っていました。母が涙声で「・・・・・元気にしとんのかね」といいます。藤原さんは2人の肩を抱き、うなずくだけで声にならならなかったそうです。

しかし、ゆっくりはしていられません。老人写真師にせかされながらカメラの前で記念写真をとりフィルムを渡され、帰らなければならないときがやってきます。

「元気で!」

「シンヤも元気でのう!」
「さようなら。さようなら!」
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思わず涙ぐんでしまいました。一生のうち1回しか使えないとしたら誰に会いに行くでしょうか。歳をとるたびに逢いたくなる人は増えていきます。その中には自分にとってかけがえのない人は1人に絞ることができないほどいることでしょう。そう考えると、歳をとることは実はとても素敵なことなんじゃないかと思えてきます。

【参考】メトロミニッツ No.075 藤原新也 「撮りながら話そう」より

メメント・モリ
(2008/10)
藤原 新也

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遭難したら

2008年4月 22日 By: rainbow Category: 日記 No Comments →

とあるフリーペーパーに載っていた短いおはなしがすごくよかったのでここで紹介したいと思います。

いろいろなことがあるものでね。
ワンダ氏は山道を登っていって、仲間とはぐれてしまったの。
不安になったワンダ氏はね、後ろを振り返り、
もと来たみちを引き返そうと思ったの。
でも、彼はふとある言葉を思い出したのね。
「迷ったら、上をめざせ」
それは、登山家の間にある教訓のことばなんだけどね。
谷へ下れば、迷い道は広がるばかり。
だけど、上へ登れば頂上はひとつ。
上へ向かって歩いていれば、きっと助かる。
ワンダ氏は迷わずその言葉に従ったの。
数時間後にはね、仲間と再会すのハグをすることができたんだって。
これ、人生という山登りにも、当てはまるかしら。

この迷ったら前進する方を選ぶという教訓は、人生にも当てはまるんですよね。悩んでばかりいないで、前に進むことによって新たな光や道ができてくるんですよね。そう信じていたいと思います。

【参考】メトロミニッツ No.66

道迷い遭難を防ぐ最新読図術―道迷いの心理とナヴィゲーション技術 道迷い遭難を防ぐ最新読図術―道迷いの心理とナヴィゲーション技術
(2001/01)
村越 真

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