消せない告白/おいしいコーヒーのいれ方
村山由佳さん作の人気シリーズ「おいしいコーヒーの入れ方」もSecond Seasonになってはやくも3作目になりました。その作品は「消せない告白」という題名です。今回はこの作品についてご紹介したいと思います。
このシリーズも始めに書籍として登場したのが1994年ですから15年にもなる大作となっています。セカンドシーズンになって主人公である和泉勝利と花村かれんは苦難を乗り越えて付き合うことになるのですが、かれんは房総半島は鴨川へいくことになり離ればなれになってしまいます。そこからは、勝利の悶々とした心の模様が多く描かれていくことになります。
今回の3作目である「消せない告白」は、主に2人のつらい恋愛をしている人の心を勝利というフィルターを通してつづられています。ひとりは、勝利が暮らしているアパートの大家さんである森下家の次男である秀人。もうひとりはおなじみの星野りつ子です。
彼らには望みが薄い恋愛をしているという共通点があり、それでも諦めきれないという思いについて村山由佳さんなりの解釈がそこには示されています。世間では望みが薄い恋愛であれば、諦めなければならないとアドバイスする人が多くいますが、それは当の本人の心に届くアドバイスなのかというと決してそうではないのです。諦められないものは必ずあり、可能性が低いとしてもいずれかなうかもしれないという思いを抱いて待ち続けてしまうのだっていいのではないでしょうか。そんな苦しいテーマになっています。
これまで、勝利からみると星野りつ子は、告白されたにも関わらずどうしてやることもできず、想われることに苦痛を感じてしまう相手だったのですが、今回森下秀人という触媒を通して改めて考えてみると、大切なかけがえのない友だちであることを再認識するのです。
今回は、かれんと勝利、マスター、丈といったこれまでの人物が登場する機会は激減していて、限られた人の間で物語は進んでいきます。それがかえって、勝利の心を整理するという意味では非常に心地よく、わかりやすい展開につながっています。かれんとの関係も今後少しずつ変わっていくのかもしれませんが、かれんも勝利に言いたいことがあるようで、その部分は次回以降に持ち越しになってしまった感じで終わっています。
次回作はもう少し先のことになるとは思いますが、今まで以上に視野を広げて様々な考え方を肌で感じた勝利がどのようにかれんとの恋愛を進めていくのか楽しみです。
おいしいコーヒーのいれ方 Second Season III(3) 消せない告白 (ジャンプ ジェイ ブックス) (2009/05/29) 村山 由佳 |
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