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摘草料理のヒミツ

2009/05/31 Category: 環境問題

日本文化の原点・京都。

その京都市左京区は花背に、摘草料理を出す宿「美山荘」があります。この美山荘は予約を取ることが非常に難しくすでに2年先まで予約がいっぱいなほど人気があります。かつてはお寺の宿坊だったそうで、携帯も通じない静寂の中にあります。

この美山荘で出す摘草料理とは、野山に生えている山菜を利用した料理のことで、人間が作った野菜では味わうことのできない美味しさと素朴さを感じることができるといいます。しかし美山荘の方によると、摘草と山菜採りは意味が違うといいます。山菜採りは生活の糧としているもので、摘草は日常生活の遊びから来ているものだと。野山の恩恵に楽しみながら接する自然と戯れる万葉以来の心が摘草料理の原点にあったのです。

主人自らが摘んできた山菜は、どれも太陽と豊かな台地が育んだもので、あく抜きなどがいらずにそのまま蒸して調理することができます。フランスで修行をつんだ主人によると料理のポイントは、以下の二つ。
・五感を楽しませること
・オリジナリティを出すこと
普通甘みを出すにはみりんや砂糖を利用しますが、煮出して甘みを作ることができるといいます。これまでの伝統を守りつつも、新しい摘草料理を模索し常にいいものを取り入れているのです。

美山荘で一年に使う山菜は100種類以上にも及びます。ネマガリダケ、ウド、ワラビ、コゴミ、イタドリ等、季節ごとに恵みが溢れていて、主人は小学校の帰りに塩をもって学校に行って帰りにそれで山菜を食べたそうです。その豊かさは秘密がありました。

日本海側の気候と太平洋側の気候が交差する花背は、その双方の植生が交じり豊かな生態系が形成されたのです。高さ30mにも及ぶ伏状台杉は通常日本海側にしかないのですがこの花背にあって、多くの植物を養う花脊の森の象徴ともいえる木になりました。

京都教育大学の田中里志准教授は、この花背の地質環境が非常に貴重なものだといいます。氷河期に作られた地質がそのまま残っていて、花脊の山にある水を通しにくいチャート層がうねっているため、雪や雨によって水がたまり抜群の保水力を発揮しているというのです。

そんな摘草料理における昔から言い伝えられてきた哲学、それは自然への敬意・感謝だと主人は語ります。この地域のことを知る、花背には何があって、どんなものが食べられていて、どんな文化、気候、風土なのか、それを材料にして料理を考えることによって花背における真の摘草料理が生まれるのです。

美山荘で出る摘草料理の一部を紹介します。
・フキノトウの白和え
・カタクリの根
・ネマガリダケのコノコ焼き
・筍の塩がま焼き
・ネマガリダケとわらびの牛鍋
・フキノトウ御飯
・アマゴの木の芽焼き

四季折々の風の感じなど、山全体の事を考えながら料理をするのが摘草料理であり自然と山の恵みは一体化しているのです。今の時代は人が育てた食材が多い中、ここでは自然の野に生きる食材ばかり。それが利用客がリピーターになる理由の一つなのです。

しかし、それはかつての日本では当たり前だったものばかり。忘れかけていた懐かしい五感を思い出すことができる数少ない場所に、人はかえっていくものなのかもしれません。この味をずっと残し続け、日本人であることの喜びを感じていたいものですね。

【参考】素敵な宇宙船地球号 2009年5月31日


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