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温泉の謎 江戸の知恵

2009/02/09 Category: 環境問題

別府温泉
日本には約28,000箇所もの源泉が存在し、そのほとんどが手つかずの状態で眠っていて、世界でもトップクラスに入る源泉数を誇っているといいます。まさに”秘湯”がまだまだ数多くあるということなのですが、その秘湯を探し求めている人の一人が温泉研究家そして秘湯ハンターの郡司勇さんです。郡司さんは数多くの著書もある方で日本中の温泉を巡り歩いてます。温泉は大地からの恵みであり、日本人で良かったと思える瞬間だと郡司さんは言います。

■世界に類を見ない別府温泉
日本各地にある温泉の中で、独特の特徴がある温泉が大分県にある別府温泉です。別府温泉には、日本に存在する11種類の泉質のうち10種類があるのです。以下に主な温泉を紹介します。

・海地獄: 青色、硫酸鉄を含む
・白池地獄: 白色、重炭酸カルシウムを含む
・血の池地獄: 赤色、酸化鉄を含む

色々な泉質がある温泉は世界広しといえども別府だけなので世界遺産に匹敵するといっても過言ではないと郡司さんは説明します。この別府地獄だけでなく、山奥には黄金色の温泉もあります。泉質は硫酸塩泉で薬のような味がする温泉です。これも秘湯ハンターの郡司さんにとっては外せない秘湯の一つです。もともと別府の温泉は全て同じ地下水を源としているのですが、それは地上へと吹き出す経路が分岐していくうちに様々な鉱物資源に触れていくことによって、吹き出す場所によって実に様々な泉質へと変化しているそうです。その吹き出し場所が5km四方に固まっているのですから不思議な地形といえるでしょう。

■別府で作る古のミョウバン作り
その温泉からとれるものの一つとして、湯の花です。草津温泉を始めとして多くの温泉で採取されている湯の花は入浴剤として使われます。その作り方は、温泉のお湯から沈殿物として取り出す方法が一般的で、草津温泉では湯の花畑が有名で木の筒を温泉が通っている様子を見ることができます。

しかし、別府温泉ではこの沈殿させる方法ではなく温泉の噴気と青粘土を反応させて湯の花を生成しています。青粘土の上を踏みつけ1ヶ月程度で湯の花がそのうわべに出てくるそうです。このように手間暇かけて作られる理由は、湯の花を入浴剤以外に別な用途に使用しているからです。それはミョウバンの結晶を生成すること。江戸時代から既にこの別府温泉で作られていたもので、染料の定着剤や止血剤、漬物の染色に使用されています。
また、世界中でもミョウバンが注目されていて、ベトナムのメコン川流域の村では川の水にミョウバンを入れています。ミョウバンを入れるとみるみるうちに水中の汚泥が固まり沈殿していきます。これによって、綺麗な水を飲むことができるのです。(ただし、使いすぎると健康への影響も懸念されることから適切な利用が必要です。)

この別府のミョウバン作りですが、秘伝中の秘伝であることからその生成方法が文書として残されていませんでした。別府大学の恒松栖先生は、科学的に合成するのであればたやすくできるのですが、なるべく原点に近い方法で生成してみたいということで、3年間ずっと研究していました。

古文書「豊国紀行」には、灰汁が使われていたと記されています。その灰汁が何の木から作られるか具体的に書かれていないのですが、別府にとある多くの木が搬入されていた事実があることが分かりました。その木が「ハイノキ」です。このハイノキはアルミニウムが多く含まれていて、燃やすと全てがハイになります。湯の花をこのハイノキの灰汁で溶かし、煮詰めればミョウバンができるのではないかと恒松教授は考えます。実際にやってみると、綺麗なみょうばんの結晶ができていました。失われた技術が復活したのです。

日本は世界に類をみない温泉天国です。至るところにある温泉をもっと有効に活用する方法が他にもたくさんあるのではないでしょうか。例えば温泉を使った地熱発電として宮城県の鬼首地熱発電所があります。日本の地熱発電の全発電に占める割合は0.2%であり、潜在的な能力はその1000倍以上もあるといわれています。うまく温泉の地熱を利用できるといいのですが、その一方で地熱発電によって温泉の湯量が減少してしまうのではないかという懸念もあります。そういった問題があることを考慮して、これまでの温泉に影響を与えることなく地熱を有効利用する仕組みが今、求められていると思います。

【参考】素敵な宇宙船地球号 2月8日

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郡司 勇

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