食育は実体験から始まる
食育という言葉が一般の人の間で広く使われるようになりました。食育という言葉の意味を調べてみると、「国民一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図れるよう、自らの食について考える習慣や食に関する様々な知識と食を選択する判断力を楽しく身に付けるための学習等の取組み」のことを指すそうです。(財団法人食生活情報サービスセンターによる)
自分が食べている食事がどのような原料からできており、おいしくて健康によく、なおかつ永く食文化として維持していくことができるようにすることが食育という言葉が持つメッセージなのです。子供の頃、野菜を畑で収穫しそれを生のまま食べることが大好きでした。とりたてのトマトやキュウリはどこか甘い味がしてそれだけで食べることができるのです。食べ物がどのように作られるかを知ることによって、その食べ物に対する関心が高まります。その結果、おいしく食べよう、大切に食べようとする気持ちが芽生えてくるのも食育のひとつも目的といえます。
しかし、近年その栽培過程をしらなくてもスーパーなどで並んでいる食材を自由に食べることができます。それによって食材へのこだわりが徐々に薄れていってしまい、結果として食べ物を粗末に扱ってしまったり、おいしく食べられない人が増えているような気がします。それは徐々に低年齢化し小さな子供の頃から、食べ物への関心がすでになくなってしまっているのではないでしょうか。
欧米では、乳幼児の発達・発育段階で味覚を重視する考え方が広まっているといいます。まるで英語教育や音楽教育を早くから行うことと似ていますね。味覚はご存じの通り五感の一つで、人間の発育や人間形成において非常に重要な一部分といえます。欧米の食育の例として実際に体験することを挙げています。様々な種類の野菜を手に取らせ、色や形、香りなどをじっくりと観察させた後、自由に扱ったり印象を話し合わせるのです。その後は、実際にそれを試食して甘い、辛い、酸っぱい、苦い等の基本的な味覚を言葉で表現させ実感させます。
言葉に出すことによって意識の底に眠っていた感情を意識化することができるのです。食体験を通じて子供の想像力を創造力にかえることが欧米における食育の目的だったのです。すべてのことが日本や実際の家庭で当てはまるとは限りませんが、一緒に色々な味の食材を食べてみて、それがどのようにできたのか、味はどんな感じかなどの感想を子供に言わせるようにすることはできると思います。そして大きくなってきたら、その食材が抱えている問題などを話してみるのもいいでしょう。小さな時に、小さなことから食べ物の勉強をこつこつすることによって将来の状況がもっともっと好転していくのではないでしょうか。
【参考】日経Plus1 2009/10/10
0~5歳児の食育―これだけは知っておきたい (2006/11) 岡崎 光子 |
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