第二の収益を求める鉄道会社の試み
不景気だと言われて続け、いつになったら景気が良くなるか分からない中、鉄道会社も例外ではなく利益の減少が目立っています。JRや大きな私鉄会社であれば、その規模でやりくりができたり不動産会社やデパート事業など経営の多角化を推進していることから影響は限定することができる部分もあります。
ところが、地方を中心とした私鉄や第3セクターの鉄道会社にとって、他に事業がないところは、経営自体の危機を迎えている状況にあります。そんな中第二の収益を求め様々な施策に対する取り組みが始まっています。今回はその施策の内容を紹介すると共に、今後どのような方向に向かえばいいのかを考えてみたいと思います。
■広告事業
千葉県にあるいすみ鉄道では、14の駅名の命名権を売り出しています。各駅の命名権(ネーミングライツ)は年間100万円から200万円程度であり、いすみ鉄道自体の鉄道名の冠につける命名権は、年間3000万円といいます。例えば、ぺんぺんという会社が大原駅の命名権を購入すると、「ぺんぺん大原駅」という名前にすることができ、さらに鉄道名の命名権を購入すると、「ぺんぺんいすみ鉄道」という感じになります。いすみ鉄道だけでなく、福岡県の平成筑豊鉄道やくま川鉄道など全国で同様の動きが広まっています。
■食品事業
最も有名なのは、銚子電鉄による「ぬれせんべい」でしょう。自社のWebページで「ぬれせんべいを買って下さい。電車の修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」とその苦しさを吐露したところ、全国から救いの手がさしのべられ、瞬く間に大ヒット商品となりました。その後関係者の様々な問題もありましたが、なんとか廃線の危機も乗り越えることができました。鉄道事業の年商約1億1000万円に対して菓子類の販売はその2倍以上である2億5000万円を稼ぎ出すまでに成長することができたのです。
それぞれの事業には、メリットとデメリットがあります。広告事業はその原資が鉄道会社がもっている資産そのものを利用するため、非常にお手軽ではありますが、その分地域住民に混乱を招くことになってしまうデメリットもあります。命名された駅は下手をすると数年間隔で駅名が変わり、そのたびに看板等も変更する必要があります。公共性が非常にたかい駅という名前がコロコロ変わるのは、好ましくはないでしょう。
食品事業に関しては、第二の収益を確保することができるのですが、銚子電鉄のように巨大掲示板で盛り上がり全国区になるまで有名になるのは至難の業でしょう。同じ柳の下に二匹のドジョウはいないのです。しかも失敗したときの投資コストはかなり痛手になるでしょう。
もちろん、地域住民にとって鉄道がなくなるくらいだったら駅名が変わってもいいと感じるのであれば問題はないとは思いますが、理想としては地域へ負担を強いることなく安定的に収益を得ることができる仕組みが構築できることにあると考えます。ではその理想に向かうためにどうしたらいいのでしょうか。
その施策案を以下に示し、それぞれについて考えてみます。
・地域に密着した広告事業
・沿線地域の開発
■地域に密着した広告事業
沿線地域の住民や企業と共に盛り上げる鉄道を目指すことが大切です。鉄道会社は積極的に地域を回り、その要望を取り入れます。鉄道会社としてできることは、自分たちが持つリソースを最大限に解放すること。例えば、車内広告を毎日変えることができるようにし、広告主がいつでもその枠内を自由に変更することができるのもいいと思います。
「今日、車内広告をみたといっていただければ、ビールを安くします」など、リアルタイム性のある情報を提供することができるでしょう。学生などが多く乗っている時間帯向けに、関係する企業に枠を提供することもできるでしょう。いずれにせよ、地域の企業と鉄道会社が共にWin-Winの関係になることが重要で、地域が鉄道を支えているんだという印象を持ってもらえるような施策が求められるのです。
■沿線地域の開発
何も不動産開発だけではなく、既存で眠っている様々な観光資源を発掘し、それを広くアピールしていくことによって、都市部の人を呼び込むことができるのではないでしょうか。いい例が、記念切符です。幸福駅というように特別な駅名をもっているところは、受験生に対する立派な観光資源をもっているといえるでしょう。
また、アドベンチャーツアーを企画したり、環境問題や様々な体験を行えるツアーを組むのもいいかもしれません。そういって沿線の魅力を鉄道会社が見つけ出していってあげることによって、地域と共に成長することができるのではないでしょうか。
この他にも色々あると思いますが、鉄道会社だけで経営を成り立たせるのはもはや厳しい状況にあることは確かなので、いかに地域の人々の助けを得ながら地盤を固め、そして外部へ広めていくかがポイントとなるでしょう。鉄道がなくなったら困る人が多いことから、真剣に存続させる努力を鉄道会社は実施していかなければならないのです。
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