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サザエさんをちょっとだけ深く考えてみる

2010年2月 07日 By: rainbow Category: ビジネス 1 Comment →

日曜日の夜6時半からのアニメといえば90%以上の方は「サザエさん」と答えることができるでしょう。そのくらい国民的なアニメに成長したサザエさんはすでに放送開始から40年以上を経過しています。この時間になると多くの人が「これで休日も終わってしまって明日から学校や会社だな」と少しだけブルーになってしまう「サザエさん症候群」なる言葉まで登場するほどこのアニメが自分たちのライフスタイルに大きく影響を及ぼしているものは他にはないでしょう。

そんなサザエさんについて、経済的な面から考えているのが有限会社ペーパーカンパニーの中村修治さんです。身近な物から世の中の動向や仕組みがわかると理解しやすいものです。今回は3つの観点からサザエさんを通して考えてみたいと思います。

1.景気とサザエさん
サザエさんは景気を測るための物差しとしての役割を果たしているといいます。景気がいいときは日曜の6時半は外食をしていたり遊んでいることが多いのですが、不景気になると家で籠もることが多くなるので、この時間はサザエさんを見ているというのです。データでみると、以下のようになり3年前から徐々に視聴率が上がっていることが分かります。
・2008/01/13(日) 18.2%
・2009/01/18(日) 20.4%
・2010/01/24(日) 20.6%

2.広告とサザエさん
サザエさんのオープニングを思い出せるでしょうか。始めから最後のシーンまでずっとサザエさんが地方の名物や景勝地を訪ねている様子は、まるで地方の宣伝をしているかのような雰囲気に見えるでしょう。ここ数年では半年に1回年が変わっていくというローテーションで以下のような状況になっています。
・2007年度 愛媛県、富山県
・2008年度 山口県、岐阜県
・2009年度 新潟県、茨城県
実は、この場面は無償でサザエさんが提供している訳ではないのです。市や県が協力費として提供していることが多く、2007年の愛媛紹介では松山市などが840万円。2007年の富山紹介では富山市が840万円。2008年の山口紹介では山口県が630万円を提供していて、700万円?800万円台が中心になっています。しかし、これで半年間自分たちの街が影響のある番組で全国に紹介される訳ですから、コストメリットは十分にあるといえるでしょう。

3.ビジネスとサザエさん
最後に、サザエさんに登場する人について見てみましょう。先に紹介した中村さんは一押しのビジネスマンとして三河屋のさぶちゃんを推しています。彼は米やしょう油などを玄関先で注文を受け取りそれを配達してくれるのですが、サザエさん一家だけでなく、その町内で同じように注文をとっているのだとしたらその売り上げは莫大なものになります。仮に一世帯当たり1ヶ月3万円程度の売り上げだとすると、町内に300世帯であれば900万円を売り上げるやり手の営業マンであることが分かります。きっ三河屋はすごい儲かっていることでしょう。

このように、サザエさんは経済の観点から見ると色々面白いものが見えてくることが分かります。その他サザエさん一家では未だにデジタル機器がほとんどありません。携帯電話はなく黒電話ですし、テレビもブラウン管の古いものです。来週のサザエさんの時に登場するリモコンが一番新しいのかもしれません。もうすぐ地デジ化されてしまうのに、電機メーカーがスポンサーのサザエさんも何らかの対応が必要なのでしょう。しかし、世の中の不景気、状況、文明の進化が入っていないからこそ、人々はこのアニメに癒しを感じ、そして現実からしばし離れることができるのです。その癒しを感じることができる世代は徐々に上がっていっていて、今の学生たちにはきっとサザエさんの面白さは薄れているのかもしれません。

【参考】INSIGHT NOW!
http://www.insightnow.jp/article/4897

「サザエさん」的コミュニティの法則 (生活人新書) 「サザエさん」的コミュニティの法則 (生活人新書)
(2008/02)
鳥越 皓之

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こころを動かすマーケティング

2009年8月 15日 By: rainbow Category: ブックレビュー No Comments →

あなたがいま一番飲みたい炭酸飲料はなんでしょうか?
あなたがいま一番飲みたい缶コーヒーはなんでしょうか?
あなたがいま一番飲みたいお茶はなんでしょうか?

これらの問いに対して、どれか一つはコカ・コーラ社の製品を挙げるのではないでしょうか。コカ・コーラを飲むのに理由などいりません。ただ飲みたいから飲む。そこにはコカ・コーラに対して自分たちがもつ確固たるブランドイメージがあったのです。

コカ・コーラは世界中に広がっていて、国連加盟国よりも多くの国で飲まれているそうです。そのコカ・コーラのブランド戦略を確立した魚谷雅彦さんという現在の日本コカ・コーラ会長がこれまで明かされることのなかったコカ・コーラのブランド戦略の考え方を示した本が「こころを動かすマーケティング」です。この本を読んでみると改めて気づかされる点が多いことに気がつくと思います。

魚谷さんは、もともとは歯磨き粉などで有名なライオンの社員でしたが、チーズのクラフト社を経てコカ・コーラ社にやってきます。会社は大きくなると余計なしがらみが多くなるものですが、魚谷さん自身の人柄もあり抜本的な改革を進めていきます。そこには自分の信念を曲げない強さを持つことが大切だと説いています。人の心を打つものは自分の強い信念と気持ちなんですよね。内容がいかに良くても気持ちが伝わらなければ意味がありません。本書で魚谷さんが言っていることとして、お客様の視点に立っているかどうかが自分の信念には必ず含まれているべきであるとあります。

それは、どの業界でも同じ統一的な考え方だと思います。お客様第一という言葉は使い古されている感じがしますが、営業部門だけでなく全社的に細部までこの考え方が徹底されているところはそんなに数多くありません。なので自分たちがそれを確実に意識することができれば大きな力となってブランド力は上がっていくのです。

本書ではその他、魚谷さんが成功させたプロモーションであるジョージアの飯島直子さんを起用したほっとするキャンペーンや、吉本芸人を起用した明日があるさキャンペーン、爽健美茶といった今では誰もが飲んでいるものの誕生秘話が紹介されていて、根底にあるお客様志向との関連性を見ることができます。また、コカ・コーラ社とその生産・販売を取り仕切るボトラー社との関係など中にいる人でないと分からない雰囲気を本書で感じることができます。

マーケティングの基本的な考え方を学ぶことができる上に、コカ・コーラという会社の一面を知ることができる読み物としても価値があるのではないでしょうか。これを読むとコカ・コーラの商品の裏に隠された想いを感じることができるので、余計ファンになってしまうかもしれません。

こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる
(2009/08/07)
魚谷 雅彦

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コンビニの100円おにぎり戦略事情

2009年8月 12日 By: rainbow Category: ビジネス No Comments →

最近、ローソンを始めとしてファミリーマート、サークルKサンクス、セブンイレブンなどで次々とおにぎり100円セールを開始しました。うなぎや辛子明太子などいつもなら140円くらいするものも100円になっているので、貧乏性の自分としては自分が一番食べたいものよりも差額ができるだけ大きいものを選択してしまうのが悲しいところなのです。

期間限定ではあるにしても、おにぎりを100円で売ってしまって利益が出るのでしょうか。そこにはコンビニ側の厳しい状況を打開しようとする周到なマーケティング戦略があったのです。さらに売るものがおにぎりでなければならない理由もしっかりとあるのです。そこで、コンビニが100円でおにぎりを売る理由とその裏に隠された思惑について見ていきたいと思います。

◆コンビニか置かれた厳しい状況
2008年、様々な業界が不況の波を受けて軒並み減収になったにも関わらず、コンビニ業界は増収を記録し、売上高7兆8566億円を記録しました。その結果、百貨店業界の7兆3813億円を抜き去ってしまう逆転現象が発生したのです。その逆転劇を演出した大きな要素として挙げられるのがタスポの存在といわれています。タスポによってコンビニでタバコを購入する人が増加し、あわせてコーヒーやおにぎりなどを購入した人が多かったので、全体として売り上げを伸ばすことに成功しました。

ところが、2009年になるとこのタスポ効果も次第に薄れてきて、売り上げも減少していくことになります。このままでは歯止めなく減少していくのが目に見えている状態だったのです。そこで、注目を浴びることになったのがおにぎりでした。

◆おにぎりを安くする理由
では、なぜおにぎりではないといけないのでしょうか。それは、おにぎりの購入の仕方から説明することができます。おにぎりを目玉商品にして、総菜や飲み物など保管商品を一緒に購入する人を狙うロスリーダー価格政策というマーケティング戦略を利用しているのです。スーパーではこの目玉商品に、卵や牛乳といったものを選ぶことが多いのですが、これは単価が低く、不況で財布のヒモが堅くなった消費者の購買意欲をそそる可能性も高い上に、関連する商品が幅広く存在することによって売り上げも期待できると言われています。ちなみに目玉商品だけを目当てに来店する人のことを「チェリーピッカー」といいます。

つまり、コンビニではおにぎりという「それだけ購入するには気がひけて、他にも何か買うかな」という気持ちにさせるツールを使って、全体の売り上げを伸ばしていこうという戦略をとっているのです。

おにぎりの原価は100円もしないでしょう。それ自身でも薄利多売を行うことによって利益を得ることができるのですが、それ以上の効果を得ることができるのです。コンビニ側にとってだけでなく、消費者の観点からもありがたいサービスといえるのではないでしょうか。おにぎり100円のありがたみが薄れてしまっては戦略としてNGなので、期間限定である必要がありますがおにぎり以外の商品についても、スーパーを超える価格設定を期待してもいい時代が来たのかもしれません。

【参考】Business Media誠
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0908/11/news004.html

なぜ毎日コンビニで買ってしまうのか? (マイコミ新書) なぜ毎日コンビニで買ってしまうのか? (マイコミ新書)
(2008/03/01)
漆原 直行

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