商店街の救世主「100円商店街」
100円という金額は不思議なもので、その金額自体がモノやサービスの値段として「安い」と印象づけることができます。100円ショップがここまで発展したのもこうした消費者の安いというイメージによるところが大きいのだと思います。
その100円というマジックプライスが今、商店街の活性化の起爆剤として全国的に広がっているのをご存じでしょうか。商店街のそれぞれのお店が工夫を凝らしてモノやサービスを100円で提供し、商店街全体が100円ショップになるというのです。
通常の品物の他に、以下のような面白い100円商品があるといいます。
・100円歯科検診 (歯科医)
・お見合い写真L版 (写真館)
・レッスン1時間 (ダンス教室)
・あなたのマイホームを絵に描きます (画材店)
・砂つめ放題 (建設業)
・位牌の掃除 (仏具店)
・小袋入りガリ(寿司店)
考えようによっては、他にも様々な面白い100円商品を生み出すことも可能で、それはそれぞれのお店の工夫とアイデア次第。またその土地特有のサービスだって提供することができるでしょう。こういった商品は、スーパーやコンビニでは手に入れることができないモノばかりであり、人と人の交流というかけがえのないものを手に入れることができるのです。
福島県喜多方市のとある商店街でこの施策を実施したところ、街に人があふれ街の全盛期を思い出したと涙を流して喜ばれた方もいらっしゃるほどの成果を全国で上げているといいます。
このサービスの発案者は山形県新庄市役所の職員である齋藤一成さん。今は全国にこのサービスに関する講演などで飛び回っているといいます。自分の市だけうまくいけばいいというのではなく、全国で抱えている閑散とした商店街を活性化することの助けになるのならということで公務員でありながら、特別に市の仕事以外のことをしていいことになっているそうです。
100円商店街がその地域に根ざしやすいのは、100円という安さを感じる人の心は全国で同じなので、消費者がそれだけで安いと感じて商店街にやってくる機会創出になりやすいという点と、何を100円で提供するかというのはそれぞれのお店で自由に決めることができ、どのお店も対象となることができることにあると思います。また、特別な設備などがいらずお手軽にどの商店街でも始めることができるという点も普及しやすい要因でしょう。
消費者は、安さと便利を求めて商店街からスーパーやデパートへと流れていきました。その消費者を呼び戻すことができるのは商店街の努力しかありません。そのとき、安さだけではないメリットをいかに提供することができるかがポイントとなります。100円という安さの他に、楽しさや喜び、そして商品をどのように利用したらいいのかといったアドバイスなどの付加価値の形が今、求められているのではないでしょうか。100円商店街はその1つの答えを具現化したものだと思います。
【参考】日本経済新聞 2010/09/18
100円商店街の魔法 (2010/04/08) 齋藤 一成 |
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