温暖化と猛毒の恐怖
2007年6月、イシガキダイを食べた人たち9人が激しい下痢や嘔吐をおこし、そのうち何人かは病院に担ぎ込まれるということが起こりました。
さらに症状は進み、水を飲むと口がしびれ、冷たい水を触ると電気が走る、かゆみが止まらなくなるといった症状が長い人で1年も続いたのです。
その原因となったたった1匹の魚を食べただけで起こった奇病。その中毒症状はシガテラ中毒とよばれる毎年2万人以上の犠牲者を出す世界最大の中毒だったのです。この中毒は元々、亜熱帯以南でしか起きなかった食中毒でした。しかもその毒性はふぐの200倍とも言われています。
シガテラ中毒の原因となるのは、ガンビエールディスカス(有毒渦鞭毛藻)という植物プランクトンです。この植物プランクトンを食べたイシガキダイを食べたことによって症状が発生したことがその後の調査で分かってきました。
シガテラ中毒にかかった魚は見た目では全く分からないそうです。以前から症状が報告されていた沖縄の漁師によると、住んでいる魚の場所やえさの内容によって、危ない魚を当てることができるそうですが、それは経験上のものです。
ガンビエールディスカスは、サンゴが死んだ海に発生することが報告されているのですが、サンゴを死滅させる様々な要因のうち、特に日本南岸で深刻な問題になっているのがオニヒトデの大発生です。
ダイバーがサンゴが死んだ海に潜ってみると多くいるオニヒトデ。海洋ジャーナリストの永田雅一さんによると、このオニヒトデはサンゴに張り付きながら移動し、中心部から胃をだして、サンゴを食いつぶしていくのです。オニヒトデが通過した後は、サンゴが食いつぶされ白化していきます。
このオニヒトデ、去年の7倍のもの驚異的な量で増加しています。まさに大発生と呼べる状態です。天敵はホラガイなんですが、乱獲で、もはやオニヒトデを抑えることは不可能とされています。
オニヒトデの卵はうまく黒潮にのると、5週間ほどで本州南岸へ到達します。和歌山や、東京・三宅島の海底でもオニヒトデによる被害で白くサンゴが死滅してしまっている状況にあるのです。
このオニヒトデの北上と共に、シガテラ中毒の患者も、始めは沖縄だけだったにもかかわらず、大阪、茨城と確実に北上を続けていることからもわかるように、危険な相関関係を証明しています。
我々が食べる魚についても、もはや安心はできないのかもしれません。現在のところ、シガテラ中毒の効果的な治療法は確立されれていないそうです。
オニヒトデも元々は重要な海の生態系だったのです。生態系の中に組み込まれていたのです。オニヒトデの幼生はサンゴのエサにもなっていて、サンゴがオニヒトデの幼生を食べて、生き残ったわずかなオニヒトデがサンゴを食べる。そんな連鎖が続いていたにも関わらず、数のバランスが崩れてしまった結果、このような深刻な問題に発展しているのです。
しかし、その数のバランスを崩したのは人間かもしれません。そして、我々に身の危険を与えることによって対策を急ぐように、人間に警告をしているのだと思います。熱帯の病気などがどんどん北上してくるといわれる温暖化、問題はそんなに悠長に考えていてはいけないんじゃないでしょうか。
【参考】素敵な宇宙船地球号 7月13日
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沖縄県はサンゴの最重要保全区域に指定していますサーフィン,リボンマグネット,寄付,募金●美ら…
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