あしたまにあーな

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あしたまにあーな > 藤本隆宏


坂の上の雲 第9回「広瀬、死す」

2010年12月 26日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

帝国主義の思惑が錯綜する中、とうとう日露戦争が始まってしまいます。皇帝ニコライ二世が戦争を回避すべく日本に対して譲歩案を提示したのに対して、それを握りつぶして隠してしまった極東総督のアレクセーエフの行動が悲劇を生むきっかけとなってしまいます。毎回歴史にタラレバはないと戒めるのですが、ここで皇帝の指示がそのまま日本に伝わっていたのであれば、日露戦争は回避することができたのではないかと考えてしまいます。

日本の夜襲から始まった戦争は、ロシア側が丁度マリア祭の日であったことから意表をついた形となってしまいます。自分のために祝砲をあげてくれたと勘違いする婦人の痛い状況とは裏腹に、アレクセーエフはこれで叩きのめすことができると微笑む姿が恐ろしくもあり、ロシア海軍の強さを感じる一面でもありました。たしかにこの後、日本軍による夜襲の結果ロシア軍の軍艦数隻にダメージを与えたのみで、壊滅的な被害を与えることができなかったことからもわかります。

しかし、今回のメインである広瀬に対しては、確実に死亡フラグが立っていました。前回の予告および今回の題名からも広瀬が戦死することはわかっているのですが、それでもどこかで生きていて欲しいと願ってしまいます。それは広瀬という男がこれまで男気あふれる素晴らしい人間であるという描写をしてきているということから、自分は広瀬自身がそのような人物であると完全に思っていて、そのような人物を第二の故郷であるロシアと戦ってなくすのはあまりに惜しいと思ったからです。

作戦をたてた有馬良橘は旅順を閉塞してしまおうと考えそれが実現します。真之は以前この戦い方を見ていて犠牲者が多く出ることを知っていたので、反対するのですが最後は作戦の立案に協力することになります。昔の場面がこのようなときに役立つとはしっかりと後に使うことを考えていたのかもしれません。結果としてこの閉塞作戦は2回実施して両方とも失敗するばかりではなく、広瀬を亡くすことになってしまいます。

広瀬は仲間が見当たらないといってかなり探していたのですが、なかなか見つかりません。船内に浸水が進み、まるでタイタニックを見ているかのような錯覚までしてきます。緊急の船に乗って逃げ出したときには、もしかしてこれで逃げることができたのではと思ってしまいましたが、まず一人がやられたときに「あぁ、ダメだな」と感じてしまいました。その直後、アリアズナに語った朝日のことを思い出していた矢先に撃たれて亡くなります。この瞬間をみせなかったのはNHKのせめてもの敬意でしょう。

亡くなった広瀬をロシア軍は丁重に扱い、ロシア正教にならって葬儀を行ないます。このあたりは、広瀬や好古がいっていたように敵味方がなくなれば仲間だという気持ちが出ていて、せめてもの救いだったと思います。

このあたりの旅順付近の戦いの迫力は本当に凄かったです。メーキングによると、マルタ共和国に再現した福井丸の船体のセットを使って大爆発を起こしたそうです。CGだけでは伝わらない迫力も、これからどんどん増えていくのでしょう。日露戦争は秋山兄弟、そしてそれを支える女性たちの思いを飲み込みながら進んでいきます。この先はまた1年後。慣れたとはいえ、早くも次回が楽しみです。

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坂の上の雲 第7回「子規、逝く」

2010年12月 12日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

これまで3人が明治という荒波の時代をどのように生き抜いていくかをテーマとしたドラマの中で、重要な一人である正岡子規が亡くなります。これまで東京・根岸の病床六尺と言われていた子規庵で様々な執筆活動を行ない、いつも人々が集まる場所でした。それによっていつでも暗くならずに済んでいたのかというと、そうでもないようで、やはり苦しいときは死んでしまいたいと思ったといい、見ている方もその苦しみに胸が締め付けられるようでした。

それでも、必死に執筆活動を続けてこれた原動力はどこにあったのでしょうか。秋山真之が訪ねてきたときに、二人はお互いの顔を覆いながら抱き合ってその苦しみを分かち合おうとしていました。いつだって子規にとって苦しみを吐露することができる存在は真之以外にはいなかったのでしょう。律を演じた菅野美穂さんによると、本木雅弘さんと香川照之さんはお互いに同い年で普段から仲がいいそうです。そんな関係が、演技の中でもプラスに働いていることは間違いありません。

正岡子規の最期を近くで看取ることができなかった真之は、そのやるせない気持ちからなのか、子規の葬儀には出席せずに遠くからあいさつをするだけにとどめます。この時、子規に対して真之はどのように思いを伝えたのでしょうか。

考えてみると、坂の上の雲というドラマが展開される明治時代を舞台にしたとき、その多くは戦争や政府などの政治的な側面がどうしても多くなってしまいます。それに対して、坂の上の雲のよさは、正岡子規という文豪を物語の中に交えることによって、全体的に他の類を見ない時代全体を感じることができる内容に仕上がっているのだと思います。そういう意味で、正岡子規という存在がいかに大きかったのか、改めて感じます。

子規の死後、自分の時間を持つことができるようになった律は30を過ぎて学校に通います。これからは自分の時間を持つようにしたいと強く願うその姿は、現代のキャリアウーマンにも通じるものがあるのではないでしょうか。彼女がこの先、どのような人生を歩んでいくのか、これから演出はあまり多くないとは思いますが、楽しみにしたいと思います。

一方、真之は海軍大学校に新たに設けられた戦術講座の初代教官になるなど、海軍人としての地位をどんどん上げていきます。たくさんの本を読みふけったという真之の仕事面はまさに完璧であり、連合艦隊参謀への道をどんどん突き進んでいくのです。

そんな真之の今回の最大のニュースといえば、稲生季子との出会いでしょう。出会った瞬間に一目惚れしたという二人は、見ているこっちが恥ずかしくなるほど誰にでもわかる様子。真之が入院した際にもお見舞いに登場し、やってきた律がこっそりと帰るほど。実は律と真之は結ばれるのではないかと思っていたので、かなり自分の中では意外な展開でした。でも、一目惚れなので、次回は見事結婚となるようです。これで、松たか子さん演じる多美にお小言を言われなくても済むようになりそうです。

その旦那である好古は、清の国で男前な清国駐屯軍司令官となっていました。自らつるはしをもって道の工事をする素敵な面や、訪問した袁世凱と酒を酌み交わし親交を深めるなど、順風満帆の駐屯生活です。まだ彼が思いきり動くのは先のようです。

それにしても、子規を演じる香川さん、本木さん、阿部さんを始めとしたキャストの迫真の演技は見る者を、話の中に吸い込ませてくれます。子規庵での香川さんの苦しみと思い、本木さんの海軍大学校での「無識の指揮官は殺人者なり」と叫ぶシーン、阿部さんの袁世凱との馬での対決とそのあとのシーン、どれも吸い込まれてしまいます。

そしてそれをバックアップする演出の数々。力が入っている番組を見ると、余計なことを一切考えずに物語や主人公の心の動きに集中することができるということを実感できる作品といえるでしょう。次回がどんどん楽しみになります。

 

 

坂の上の雲 第6回「日英同盟」

2010年12月 05日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

約1年ぶりの再開となりました坂の上の雲で、時間が空いてしまったことのフォローとしてNHKもゴールデンタイムを使って昨年の再放送を繰り返していました。自分もすべてを見ることができませんでしたが。頭を龍馬伝から少しずつ変えることができ第2部の初回を迎えます。

第1部で秋山好古、真之、正岡子規の3人の松山からの生い立ちとそれぞれの進む道について語りましたが、第2部ではすでに3人の道は全然違ったものとなっているためお互いの絡みはほとんどありません。なので、第2部からの見方としては3人のつながりというよりも出身が同じ3人がそれぞれどのように近代日本を生きていったのかを純粋に楽しんだ方がいいのかもしれません。そんな気持ちで第2部から臨みたいと思います。

物語は真之と広瀬武夫の2人がイギリス・ポーツマス港でイギリスが建造し日本が購入した戦艦「朝日」の見学のシーンから始まります。日本が帝国主義になって軍拡するためには国民の必死の税金がなくてはどうしようもありません。そのことを強く思いイギリスの人々に断言した広瀬は、相当有能でありリーダーとしてふさわしい人であったのだと思います。

そんな広瀬はロシアでの駐留6年間の間で、ロシアの人々に心から尊敬され仲間として受け入れてもらっていました。日本の武士の精神をアリアズナに説く姿は彼の誠実さをうまく表現しているようです。もちろん実際の彼がどのような人物であったのか自分は知りませんが、義理と人情に厚い人柄であり愛されるべき人物だと感じた人は多いのではないでしょうか。

ロシアは、極東の奥深くまで迫っており危機感を感じた伊藤博文がロシアにやってきた際にも広瀬は勇気を持って伊藤に現実を伝えます。結果として信じてもらえませんでしたが、結果として真実を伊藤に伝えることができたのです。

そのロシアの様々な場面は実際に撮りに行ったと信じて疑わせないほどのクオリティの高い映像ばかりでした。とくにロシア正教会と宮殿の様子は1つの芸術作品を見ているかのような錯覚を覚えるほど。そんな映像の演出について見どころとしてNHKのWebページに書かれている内容がすごく面白いので、是非見てみるといいと思います。

その頃の好古は、中国・北京に出征しロシア軍が略奪を繰り返している姿を目の当たりにします。今回セリフは数える程度でしたが、ロシア軍が行なっている行為を目に焼き付け、今後の好古の行動に何らかの影響を与えたに違いありません。その結果がどうなるのか、それはあとの話に回しましょう。

真之と正岡子規は、久しぶりの再会でしたが、やっぱりこの二人が仲よさそうにしていると見ている方も嬉しくなります。香川さんの弥太郎像がまだ抜けずに、どこかで笑いがあるのではと思ってしまいますが、最後までそれはありませんでした。当たり前ですが。

時代は伊藤がロシアとの協力に失敗し、竹中直人演じる小村寿太郎が中心になって進めた日英同盟が実を結び、確実に戦争の道へと突き進んでいきます。世界の仲間が祖国のために戦わなければならないことにやむを得ないと諦め、争う心の葛藤に注目していかなければならないようです。