ガンの起源とは
大河ドラマが終わるといつも楽しみなのがNHKスペシャル。ドキュメンタリー番組としては非常に洗練されていて良く作られた番組なのですが、あまりにも現実を考えさせられるような重いテーマの時は、敬遠してしまいがちになってしまいます。
そんなNHKスペシャルの今回のテーマは「病の起源」で、その第1回にあたります。今回取り上げられた病は「ガン」。日本人の2人に1人がなるとされているこの病に、我々は特別な思いを持つのではないでしょうか。その「ガン」の起源はいつからなのか、そしてそれを防ぐにはどうしたらいいのか、知りたい欲求は高まります。
そんな内容についてかいつまんで紹介したいと思います。まずガンはいつからあったものなのか、それは単細胞生物から多細胞生物に進化した5億年前ほどにさかのぼります。細胞のコピーに失敗したものから、がん細胞が生まれ、それが分裂を繰り返すことによって増殖を繰り返す、これがガン細胞なのです。
つまり多細胞生物については、一定の割合でガン細胞ができる可能性を秘めているのですが、ニンゲンと99%遺伝子が同じと言われるチンパンジーがガンになる割合は2%。日本人が30%もあるのと対称的です。つまりチンパンジーからニンゲンに進化するまでの1%の違いが、ガンになりやすい種別にさせる要因があったのです。
それは、大きく3つの要因から成り立ちます。
1.生殖行為
ニンゲンは、チンパンジーと異なる進化の途中で、常に精子を作り出す必然性に迫られます。精子を作り出す細胞は速く増殖を繰り返すのですが、これをガン細胞は巧みに利用し、自らの細胞を急速に増殖させることに成功しました。
2.FAS
FASとは酵素(脂肪酸)のことで、ニンゲンの脳を大きくし神経をつなぎ合わせるために必要なものです。これをガン細胞は利用し、増殖を行うようになります。FASはガン増殖には欠かすことの出来ない物質なのです。
3.紫外線
ニンゲンは、太陽光がよくあたり、紫外線が浴びるアフリカから緯度の高いところ、そして世界中に移動を行うようになります。紫外線はガン細胞の増殖を抑制する働きがあるのですが、紫外線の当たらない場所にも住むようになり、ガンになりやすくい環境になっていきました。
このように、ニンゲンの進化とともに手に入れた機能を巧みに使って、ガン細胞は自らの生存を試みてきたという経緯を見て取ることが出来ます。今の我々が、このような文化や知識等を持つことができた代償と言えるでしょう。
1は、どうしようもないのですが、2についてはFASを阻害する薬品の開発が行われており、人体への影響を最小化しつつガン細胞の増殖を抑えることができるものと期待されています。また3については、1日15分程度日光に当たることを勧めています。さらに紫外線に当たることで得られるビタミンDを摂取することによって、がん発症率を抑えることも実証実験で分かってきました。
がんになるリスクを0にすることは、人が今の進化の恩恵を享受している以上できません。その上で、少しでもリスクを抑えることが出来たとき、折り合いをつけていけるのではないでしょうか。そんなことを考えさせられた番組でした。
【参考】NHKスペシャル 病の起源 2013年5月19日放送
NHKスペシャル病の起源〈1〉睡眠時無呼吸症/骨と皮膚の病/腰痛 (2009/02) NHK「病の起源」取材班 |
NHKスペシャル病の起源〈2〉読字障害/糖尿病/アレルギー (2009/03) NHK「病の起源」取材班 |
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