しあわせのかたち
あなたさえいれば、私は幸せ、もう何もいらない・・・
恋愛ドラマにありがちなセリフですが、その一瞬本人は本当にそう思えるのだから仕方ありません。この人にとって「あなた」以外は本当にいらないのかといえばそうではなく、欲しいものはたくさんあります。
人は、様々な欲求を抱きながら毎日を生活しています。それらの欲求が満足される度に人は満足感を覚えるのですが、その1秒後にはさらなる欲求が生れます。それは人間にとって当たり前のことなのですが、その刹那の満足感に人は幸せを感じるのかもしれません。
このように人によって抱く欲求は異なることから、その「しあわせのかたち」も人それぞれで何か標準的なものさしで測ることなどできないと考えられてきました。
しかし、人がこういったあいまいなものを許したくないという「欲求」が存在するのも確かな訳で、このたび政府は国民の豊かさを測る指標として「幸福度指標」について原案を作成しました。幸福度指標は国内総生産(GDP)では測定できない指標を集めたもので、国民が幸せかどうかを判断する際の物差しにするというのです。これを経済協力開発機構(OECD)に提案して、世界共通とするのが狙いだといいます。
幸福度指標は、健康、経済状況、人間関係の大きく3つの分野から成り立っていて、それぞれ6項目から10項目の個別指標から成り立っています。詳細は以下の通り。
◆健康
・ 平均寿命
・ うつ病患者の人口比率 等
◆経済状況
・ 低所得者の比率
・ 住宅の質 等
◆人間関係
・ 地域活動の参加率
・ 個人的な相談相手がいるか 等
内閣府のWebページにある「幸福度に関する研究会」の検討状況によると、このような幸せを指標化する試みは1970年代から行なわれているそうですが、実を結んでいないのはどんどん価値観が多様化してしまっていて値を算出すること自体は容易なのですが、それが実生活に何の影響力も持たない陳腐化された値になってしまうことを危惧していたからなのではないかと考えています。そう考えると、今回この値が国際的に統一的に語られるような方向にもっていけるのかということも懐疑的にならざるを得ません。
それでも、指標化することのメリットはあるはず。という訳で、上記の研究会の開催趣旨を見てみると次のように書かれています。
「新成長戦略」(平成22年6月18 日閣議決定)に盛り込まれた新しい成長及び幸福度に関する調査研究を推進するため、有識者からなる「幸福度に関する研究会」(以下「研究会」という。)を開催する
【幸福度に関する研究会 設置根拠 より】
閣議で決定したから検討する、としか読むことができないため、この指標を使ってどのように自分たちの生活が良くなったり、幸せになれるのかが分かりづらい状況です。政策に反映するのは分かるのですが、人それぞれのしあわせのかたちを指標化したものがどこまで政策に反映できるか、イメージできる人は多くないでしょう。
ではどうすべきか、それが大きな課題でもあります。幸福度指標を作るのであれば、それに見合った効果を得ることが求められます。国際的に値を比較し合うのではなく、地域ごとについて算出をしながら、地域の独自色を作りだしていくための指標値として利用するのがいいのではないかと思います。例えば、A市では他地域よりも地域活動度合いが高く、コミュニティーが形成されている、なのでそういったことを求めている人はA市に移転してはどうか、等の利用方法があるでしょう。
よく、ビジネス系の週刊誌などでランキングが発表されますが、それに近いものがあるかもしれません。そうして市民が自分にとって何を最重要視するかを選び、行動するための指標値となれば、有意義に活用することができるのではないかと思います。
政府が今後、この幸福度指標をどのように国際社会で利用していこうと考えているのか、しっかりと確認していきたいと思います。
【参考】
・日本経済新聞 2011/05/23
・内閣府 http://www5.cao.go.jp/keizai2/koufukudo/koufukudo.html
日本の幸福度 格差・労働・家族 (2010/07/16) 大竹 文雄、 他 |
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