心に潜む5つの顔
最近書店で山積みになったビジネス書の題名を見てみると、精神的な強化を訴えるものが多いことがわかります。社会人として多くの困難が増え、精神的な強さを身につけたいと願う人が増加していることや、よりよい人間関係を築くことに不安を覚えている人が多いことによるのかもしれません。そういった書籍で勉強するのもいいですが、自分や周りの人の性格を少しじっくり観察してみることによって自分を省みてはいかがでしょうか。
ここでは、精神療法のひとつである交流分析を使って考えてみたいと思います。交流分析は、人の自我を5つの機能に分けその強弱や組み合わせによって、心の状態が分かると考えていて、誰の心にも5つの機能(5つの顔)が潜んでいるのです。以下にその5つの顔を紹介します。
◆【CP】支配的な親(Critical Parent)
規則や伝統を重んじ、厳しさを持って自分自身や他人に接することができる自分。ときに、権威的、威圧的になりやすく、融通がきかない面も持ち合わせている。いわゆる「昔ながらのおやじ」タイプ。
◆【NP】養育的な親(Nurturing Parent)
思いやりがあって、相手を受け入れ、やさしい言葉をかけることができる自分。ときに、世話を焼きすぎ、親切の押し売りをして、うざったく思われる面もある。いわゆる「ニッポンの母」タイプ。
◆【A】成人(Adult)
状況をよく観察し、論理的、合理的に答えを出すことができる自分。思慮深いが、ときに冷静で打算的すぎて冷たい印象もある。いわゆる「クールな大人」タイプ。
◆【FC】自由な子ども(Free Child)
好奇心が強くて自由な発想を持ち、行動も自由。創造性も豊かで、それを表現できる。ときに、軽率すぎて周りに迷惑をかけ、自分勝手な振る舞いが目立つこともある。いわゆる「やんちゃっ子」タイプ。
◆【AC】順応した子ども(Adapted Child)
控え目で協調的。自分を主張するより、周りに合わせるタイプ。ときに、指示待ちになりやすく、妥協しやすい面もある。また、ストレスの反動から態度ががらりと変わることもある。いわゆる「いい子ちゃん」タイプ。
このように、1人の人の中には5つの機能があり、どれが強く出すぎ、どれが弱すぎるかによって、人間関係への影響が変わってくるといいます。「サザエさん」で考えてみると以下のような役割になると考えられます。
【CP】支配的な親(Critical Parent)……波平
【NP】養育的な親(Nurturing Parent)……フネ
【A】成人(Adult)……波平、フネ
【FC】自由な子ども(Free Child)……サザエ、カツオ
【AC】順応した子ども(Adapted Child)……ワカメ、マスオ、タラオ
こういったキャラクターが様々な人間模様を描き交わることで、自然な感じの温かみや馴染み深さ、共感を生んでいるのです。そういう意味でよくできた設定だと思います。大切なことはこの中でどれが一番いい、悪いということを決めつけるのではなく、自分がまずはどの属性に位置しているのかを把握し、併せて他人の属性を知ることによって自分や相手の考える傾向を客観的に見つめ直し、冷静になるためのツールでしかないのです。
例えば、熱くなりやすい自分がいるのであれば、自由な子どもなどになっていないか、そのときに成人になるようにしなきゃと自分で省みてみるといったように考えてみるのです。身近な人間関係のなかで自分と相手がそれぞれどれに属していて、自分はどうすれば相手にマッチするかを時々考えてみると、人間関係も違った側面で見ることができ、心の中に余裕が生まれることができるのではないでしょうか。
【参考】AllAbout
http://allabout.co.jp/health/stressmanage/closeup/CU20081025A/
こじれる人間関係―ドラマ的交流の分析 (2000/07) 杉田 峰康 |
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