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坂の上の雲 第11回「二〇三高地」

2011年12月 12日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

今回は、乃木希典が指揮する第三軍による旅順要塞総攻撃がほぼ全編にわたって繰り広げられていました。この1つの戦いに1時間以上を費やしてじっくりとみせるのは、後にも先にもこのドラマだけなんだろうなと思うほど、内容が充実していました。戦争というものを肯定するつもりはありませんが、指揮官だけでなくその配下で必死になって戦っている将兵たちの生き様をこれでもかという位に目の当たりにして、これまでにない複雑な気持ちになります。

きっと、これに続く第二次世界大戦、太平洋戦争という場面では、もっと兵力が乏しい中でこれ以上の戦果を求められることになるのだと思いますが、自分にとってはこの戦いだけみても本当に戦争の悲惨さを感じてしまいます。

特に、三千百余人の白襷隊は、旅順要塞に対して人柱となって特攻していくのですが、その姿は後の特攻隊に重ねて見てしまうほどつらいものです。日本兵の観点から綴られている物語ですが、敵兵として描かれているロシア兵側にとっても、絶えず突進される日本兵との戦いは苦しいものだったでしょう。広瀬が亡くなって、ロシア側の観点から物語を語ることができなくなってしまったため、「日本にとってどうだったのか」という一方面からのみとなっています。

自分にとっては、この事実自体を詳しく知らなかったので、それを知るために今回の二〇三高地に関する内容はそれを十分すぎるほどリアルに描いてくれていて把握することができるのですが、それだけで終わらせるのではなく、ロシア側からみた日露戦争というものがどのように写ったのか、そのことを知ることによって両側面から物事を見ることができると思っています。

乃木は今まで正面突破をこれまでなくなった兵士のためだと表現していましたが、それを今回はもっとマクロ的に観て日本が勝つために、正面突破はあきらめ二〇三高地奪取に切り替えようとします。その二〇三高地は北海道出身の第七師団によって頂上を占拠しますが、それも一時的。このときの師団長の演技がものすごく迫真に満ちていて、演技に完全に飲み込まれます。

この二〇三高地は、実際のロケは北海道で実施したそうなのですが、スケールが違うと感じたのは山を駆け上る人の多さです。山一面を人がよじ登っていく姿は、本当の戦争を間近で観ているようで背筋が凍る思いで観ていました。おそらく多くの人がそう感じたのではないでしょうか。壕の間をかける兵士たちの表情を観ていると、生死は本当に紙一重のように思えます。

二〇三高地がすぐにロシア側に奪取された後に、第三軍を指揮することになったのが満州軍総参謀長・児玉源太郎でした。乃木と西南戦争の時の話をし、その頃から乃木にとって児玉は命を救ってくれた恩人であったので、いやな顔せずに指揮権を渡します。このあたり、人間ドラマですね。高橋英樹と柄本明の演技が光っていました。何も語らずとも二人の心が通っていることを感じさせます。

高橋英樹といえば、桃太郎侍だ、越後製菓だという人もいますが、このときの彼は、完全に総参謀長でした。彼の指示は的確で、見方の多少の犠牲に臆することなく、全体としての最適解を導いたことによって二〇三高地の制圧に成功します。このときに遠くに旅順港が見えることに歓声を上げる兵士と共に、自分も涙がとまりませんでした。

しかし、二〇三高地は戦争の1つの場面です。まだ秋山兄弟が登場するそれぞれの大きな戦いが2つ残されています。これらが、二〇三高地を制圧したことによってどのように変わっていくのか、次回へのフラグはすでに両方に張られています。二〇三高地からの旅順港への砲撃は停泊中の戦艦を何艘かに命中しますし、満州では大量のロシアによる増兵が確認されています。それぞれの戦いはまだまだ続きそうです。来週も見逃せません。

坂の上の雲 第10回「旅順総攻撃」

2011年12月 04日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

とうとう最終部となる第3部が始まりました。始まりの時間が7時半からでもう少しで見逃すところでしたが、時間が長い分映画を観ているかのような感覚になりました。その一つ一つの出来はものすごく、これが1年間続いてくれれば史上最高の大河ドラマになったのではないかと思えるほど。久々にわくわくしながら最後まで見ることができました。

1ヶ月ほど前から復習するための番組が放送されていてしっかり復習をしたおかげか、タイムラグをあまり感じることなく今回の旅順攻撃の場面に入っていくことができました。前回まででロシアと侵攻のある広瀬が亡くなり、さらに正岡子規もなくなったことから、第3部は日露戦争を描くことがほとんどになるのだろうと思っていましたが、今回のバランスを考えてもその通りであることが分かります。

物語のはじめは日銀副総裁の高橋是清が日露戦争の戦費調達を行うためにイギリスに滞在することから。当たり前の話ですが戦争を進めるためにはお金が必要であり、自国のお金だけでまかなえるものではないので、他国から融資してもらわなければなりません。この当たり前のことを、しっかりと描いているドラマを見たのは自分の中でこれ以外にありません。

日露戦争で戦っている人々以外にも日本を勝利に導くために必死になって戦っている人がいるのです。ユダヤ人の金融家が日本に融資しますが、それはロシアのユダヤ人に対する仕打ちがあまりにもひどいことが起因していて、そういったことを高橋是清は「世界は複雑だ」と表現します。今の時代に高橋是清がいたら、彼はなんと嘆くのだろうとつい考えてしまいます。

そんなお金を工面してくれたにも関わらず、陸軍が旅順で戦っている間はつねにお金がなく、玉がないと嘆きます。限られた予算を陸軍のこの第三軍にうまく渡せなかったのかもしれません。柄本明さんが演じる乃木希典は何の情報もないのに上からは期日だけは迫られ、正面突破を人海戦術で攻めるしかありませんでした。このドラマに出てくる俳優や女優はみなさん、うまい人ばかりなのですが、中でも柄本明さんの迫真の戦いぶりは、観ているこっちも息をのむほどでした。戦闘シーンで、どうしてこんなにリアリティがあるのだろうと不思議に思っていたら、NHKのWebページにその答えがありました。

それは、歩兵一人一人の表情がしっかり見えるということ。ご飯を食べて一息ついている場面や、決死の戦いをしている最中の表情、そのすべてがつぶさに写っているのです。こういうシーンでは、指揮官ばかりが注目され、兵はひとかたまりで表現されるのですが、このドラマではそれをよしとしないところに、クオリティの高さを感じます。

その旅順から離れた遼陽の近くに好古はいました。真之が感情の起伏をあらわにし、上のものから諭されていたのに対して、好古はほぼ完璧な振る舞い。さすがです。敵情視察の兵士をねぎらい、その報告にそってロシア陸軍を横から攻めて撤退に至らせます。危なげなく任務に当たっている好古をみると、昔からこのひとは弱い部分がないなと感じ、常に比べられる弟の真之に同情してしまいます。いつか必ずある失敗が命に関わる問題でないことを祈ってしまいます。

さらにそこから遠く離れた船上には秋山真之が、連合艦隊の一員として旅順港を常に監視していましたが、今回は弱い部分を思い切り周囲にさらけ出してしまいました。これも昔からの彼のキャラクターではありますが、正しいことをきちっと述べるいい面と、頭に血が上ってしまった時の突発的な行動には激しい落差があります。今回すごく感じたのは戦場で、1つ誤った判断をしてしまうと多くの兵士を失い、命もなくなってしまうということ。真之の冷静さを失う行動の裏に、多くの命がなくなるリスクを考えると、参謀長の島村の背負い投げも当たり前のことのように思います。

しかし、真之には周囲にあまりのも大人ですばらしい判断ができる上司がたくさんいるということが、安心材料ではあります。先ほどの島村を始め、東郷平八郎といった石原軍団の重鎮がきっちりと抑えてくれているので、きっと大丈夫でしょう。どうしようもなく厳しい戦いはきっといい方向に向かってくれるのではないかと期待させられます。

次回は、二〇三高地攻めです。一つ一つの話が独立していて、それらの関連性は非常に薄いのですが、過去の絡みを脳裏に浮かべながら、すべての関係者が登場し続け、どのように生きていくのかをチェックしながら観ていくと面白いと思います。

坂の上の雲 第7回「子規、逝く」

2010年12月 12日 By: rainbow Category: 坂の上の雲 No Comments →

これまで3人が明治という荒波の時代をどのように生き抜いていくかをテーマとしたドラマの中で、重要な一人である正岡子規が亡くなります。これまで東京・根岸の病床六尺と言われていた子規庵で様々な執筆活動を行ない、いつも人々が集まる場所でした。それによっていつでも暗くならずに済んでいたのかというと、そうでもないようで、やはり苦しいときは死んでしまいたいと思ったといい、見ている方もその苦しみに胸が締め付けられるようでした。

それでも、必死に執筆活動を続けてこれた原動力はどこにあったのでしょうか。秋山真之が訪ねてきたときに、二人はお互いの顔を覆いながら抱き合ってその苦しみを分かち合おうとしていました。いつだって子規にとって苦しみを吐露することができる存在は真之以外にはいなかったのでしょう。律を演じた菅野美穂さんによると、本木雅弘さんと香川照之さんはお互いに同い年で普段から仲がいいそうです。そんな関係が、演技の中でもプラスに働いていることは間違いありません。

正岡子規の最期を近くで看取ることができなかった真之は、そのやるせない気持ちからなのか、子規の葬儀には出席せずに遠くからあいさつをするだけにとどめます。この時、子規に対して真之はどのように思いを伝えたのでしょうか。

考えてみると、坂の上の雲というドラマが展開される明治時代を舞台にしたとき、その多くは戦争や政府などの政治的な側面がどうしても多くなってしまいます。それに対して、坂の上の雲のよさは、正岡子規という文豪を物語の中に交えることによって、全体的に他の類を見ない時代全体を感じることができる内容に仕上がっているのだと思います。そういう意味で、正岡子規という存在がいかに大きかったのか、改めて感じます。

子規の死後、自分の時間を持つことができるようになった律は30を過ぎて学校に通います。これからは自分の時間を持つようにしたいと強く願うその姿は、現代のキャリアウーマンにも通じるものがあるのではないでしょうか。彼女がこの先、どのような人生を歩んでいくのか、これから演出はあまり多くないとは思いますが、楽しみにしたいと思います。

一方、真之は海軍大学校に新たに設けられた戦術講座の初代教官になるなど、海軍人としての地位をどんどん上げていきます。たくさんの本を読みふけったという真之の仕事面はまさに完璧であり、連合艦隊参謀への道をどんどん突き進んでいくのです。

そんな真之の今回の最大のニュースといえば、稲生季子との出会いでしょう。出会った瞬間に一目惚れしたという二人は、見ているこっちが恥ずかしくなるほど誰にでもわかる様子。真之が入院した際にもお見舞いに登場し、やってきた律がこっそりと帰るほど。実は律と真之は結ばれるのではないかと思っていたので、かなり自分の中では意外な展開でした。でも、一目惚れなので、次回は見事結婚となるようです。これで、松たか子さん演じる多美にお小言を言われなくても済むようになりそうです。

その旦那である好古は、清の国で男前な清国駐屯軍司令官となっていました。自らつるはしをもって道の工事をする素敵な面や、訪問した袁世凱と酒を酌み交わし親交を深めるなど、順風満帆の駐屯生活です。まだ彼が思いきり動くのは先のようです。

それにしても、子規を演じる香川さん、本木さん、阿部さんを始めとしたキャストの迫真の演技は見る者を、話の中に吸い込ませてくれます。子規庵での香川さんの苦しみと思い、本木さんの海軍大学校での「無識の指揮官は殺人者なり」と叫ぶシーン、阿部さんの袁世凱との馬での対決とそのあとのシーン、どれも吸い込まれてしまいます。

そしてそれをバックアップする演出の数々。力が入っている番組を見ると、余計なことを一切考えずに物語や主人公の心の動きに集中することができるということを実感できる作品といえるでしょう。次回がどんどん楽しみになります。