CO2を再利用するという温暖化対策
これまで議論されてきた温暖化対策では、主に二酸化炭素を出さないようにするための施策があります。例えばバイオ燃料に代表される二酸化炭素を出さない燃料の開発などが挙げられます。そういった取り組みはこれからも様々な産業で活性化していくと思いますが、今回取り上げるのは排出されるCO2自体を再利用して化学製品の材料にしてしまおうという「CO2固定」という考え方です。
今、三井化学ではCO2と水素からメタノールを作り出す実証実験を行なっています。メタノールはアルコールランプの原料など広く燃料として利用されています。その他様々な樹脂製品の原料としても利用されている工業的には一般的な製品です。試験レベルでは、140トンのCO2から100トンのメタノールを精製することができるそうで、そのうち30トンは生産に必要なエネルギーなので、実質70トン分の二酸化炭素をメタノール化することができます。一般的にメタノールは天然ガスを一酸化炭素と水素に分解して作り出すのですが、上記のようにCO2を利用し精製することによって原料となる天然ガスの消費を抑えることが出来るようになります。
このCO2によって作られたメタノールを燃やしても自然界から天然ガスを取り出すよりは二酸化炭素の消費を抑えることはできますが、単に燃やしてしまっては、再び大気中に二酸化炭素を放出してしまうことになります。そこでこのメタノールを使って燃やすことが少ないような樹脂製品を作り出し、長く世の中に定着させることが求められると思います。「CO2固定」という考え方は、排出されたCO2自体を海底深くに埋めてしまうという考え方もあるのですが、これでは根本的な解決にはなりません。
日常的に必要な樹脂製品をこのCO2から作られたメタノールを使ってつくりだし、長く利用し、寿命が来たら再度それを燃やすことによって排出されるCO2を利用するという循環を作り出すことができれば、生産段階で必要なエネルギーを考慮しても十分二酸化炭素の放出量を削減することができるでしょう。政府が打ち出した「2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減する」という目標を達成するために、こういった二酸化炭素の循環利用ができる仕組みを他にも模索する必要があるのではないかと考えさせられます。
【参考】日本経済新聞 2010/02/27
CO2固定化・隔離技術 (CMCテクニカルライブラリー) (2006/08) 乾 智行 |
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炭酸ガスからメタノールを製造するという話は全くナンセンスなものです。
その理由が分からないということであれば、三井化学の役員の人にナンセンスな技術だと説明した際の資料をメールでお送りします。
東京都千代田区神田練塀町55-902
村井正治
コメント by 村井正治 | 2010/08/01 14:19